進撃 | ナノ




今日は皆で探検しよう、ということになった。名前がお気に入りの場所があるから皆にも教えてあげるね、とのことで向かった先にある森は昨夜降った雨がまだ乾いておらず芝生には寝転べなかったけれど景色はとてもよく、お昼はここで食べようということになった。用意してきたシートをひいてその上に座る。皆で食べるごはんはやっぱり最高だった。片づけをしているとき、ふと、名前が言う。


「この木の上から見る景色が一番綺麗なのよ」
「は・・・?」


エレンが間抜けな声を発してしまったがエレンだけではない。僕とミカサも目をおっきく見開いて名前を見た。名前が触っていた木はとても大きくて高くて。とてもじゃないけれど子供ひとりでは登れるはずのない大木だった。それでも名前は


「よく一人で登ったの。初めて見た夕日、綺麗だったな」


、と思い出を語っていた。木に手と足をかけて登りはじめようとする名前を見て、慌てて止める。だが名前は素直に聞く人ではない。



「名前、危ないから降りて」
「ミカサの言う通りだよ!降りてきて名前!」
「大丈夫!ほら、あそこに虹が・・きゃ、」
「名前!」


名前が手を滑らせ、真っ逆さま。ほら。だから言ったのに。僕は走るがこれでは間に合わない。同じようにミカサも走るが間に合いそうにない。このままでは名前が。僕はぎゅ、と瞼を瞑って「名前」と叫んだ。僕の目の前で短い黒髪が揺れた。地を思い切り蹴って前へ飛び出し手を伸ばす。エレンがぎりぎりのところで落ちてくる名前を抱き止めた。


「気をつけろよ」
「ありがとう、エレン・・・」

「大丈夫!?名前!」
「アルミン」


アルミンが慌てながら駆け寄ってくる。


「昨日の大雨でまだ木が湿っていたのね。手、滑らせちゃった」
「もう・・名前ってば・・!あまり心配かけないで、って怪我してるじゃないか!」
「え?・・ああ、これぐらい大丈夫よ」
「ダメだよ!ばい菌はいったらどうするの!」
「大袈裟ね。アルミンは。」
「俺がおぶってってやるよ」
「エレン」
「乗れよ」
「じゃあ・・」
「名前は僕が運ぶよ!」
「アルミン?」
「ほら名前!」
「気持ちは嬉しいけどアルミンに私を運ぶのは無理が・・」


アルミンの瞳がやけに真剣で。どうしたのだろう。いつもはエレンに任せるはずなのに。負けてしまった名前は小さくため息を吐いた。


「・・分かったわ。それでいいわよね、エレン?」
「俺は別に・・ってかアルミンに運べるのか?こいつ以外と重・・げほ!!」


名前の拳がエレンの脇腹へと綺麗にはいる。お腹を抱えて痛みに耐えるエレンに僕は哀れな目でエレンを見てしまっていた。


「アルミンにおんぶされるなんていつ以来かしら。昔は私がよくしていたのに」
「いつの話してるんだよ!ほら、立つから大人しくしててね!」

なんだかぎこちない動きにおぶられてる自分でさえも心配になる。足腰を鍛えさせなきゃいけないと思ったのと同時、少し、ほんの少し逞しくなった背中に名前は喜びを感じた。


タイトル/メルヘンa




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