進撃 | ナノ
あの頃はいつでも一緒だった。
「ちょっと!アルミンになにしてるのよ」
いつものように虐められていた僕を助けてくれたのは姉の名前だった。名前は僕と違って体力があって自信家で、はっきりものを言う、笑顔が絶えない華やかな人だった。男たちを投げ倒す姿はかっこ良くて、僕はそんな名前に憧れを抱いた。僕も名前のような人間になりたいと。けれど名前は私みたいな人間になっちゃダメ、と繰り返すばかりだった。
「これだから最近の子供は嫌なのよ」
、と女の子なのに舌打する姿に僕はひっそりと苦笑した。少し遅れて、名前の後ろからミカサとエレンの二人が走り寄ってきてひょこりと顔を覗かせた。
「アルミン無事か!?」
「あ、うん」
「っくそー!また名前に先を越された!足速すぎんだよ、お前!」
エレンの言葉に僕はなにかを納得する。女の子である名前に負けるのは相当悔しいのだろう。あのミカサでさえも名前には叶わない。僕たちは同じ人間なのに時折、違って見えてしまう。
「でもどうして皆がここに?」
「アルミンがまた虐められてるから早く助けに行かなきゃ、って名前が言ったんだ。来てみたら本当にやられてるしよ・・双子って恐ろしいな」
なにかを感じ取るものがあるのかもしれない。差し出された手に僕は目を丸くして、瞬きを繰り返す。
「もう、アルミンは私が守ってあげないとダメなんだから」
「子供扱いは止めてよ!」
名前は僕をからかうのが楽しくて、好きらしい。そして、顔に似合わず過保護なのだ。アメジストの髪が目の前でゆらゆらと揺れる。僕は手をかりることはなく、ゆっくりと自分の力で起き上がった。
「はは、いいじゃねーかアルミン。今のうちに甘えとけよ」
「エレン!」
「いで!」
ミカサがエレンの頭を叩いた。
「調子にのりすぎ」
「いってーな!ミカサ!」
ミカサが睨みつけるがエレンは怯まない。僕はそれをはらはらとした様子で見ていた。隣で聞こえる笑い声。名前の透き通った声。
「ふふ、やっぱりミカサとエレンは仲いいね」
「は!?なに言ってんだよ名前!」
「可愛い」
「名前その辺にしておいた方が・・エレンもミカサも困ってるよ」
「、はあーい」
帰ろうか、と名前は笑みを浮かべる。四人並んで歩くのは当たり前のことだ。
そしてそれがどうかいつまでもこのままで。
そんな、いつまで続くか分からない綺麗事に夢を見続けるのだ。
タイトル/メルヘンb
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