進撃 | ナノ
「いーい?名前はお姉さんなんだからアルミンを守ってあげてね」
なにかあれば「お姉さん」なんだから。、と言われた。たった数分早く生まれただけなのになんて不公平なんだ、と思う。それなら私だって「お姉さん」じゃなくて「妹」がよかった。そしたらきっとこんな思いしなくてすんだのに。アルミンが生まれて、私は最初はアルミンが邪魔で仕方がなかった。だって、結局最後には私がお姉さんだから、で終わってしまう。我慢してね、とかアルミンに譲ってあげてね、とかまだ私だって子供なのにこれぐらいで泣かないで、とかお姉さんらしくしてね、とか。もううんざり。いつの日だったか。アルミンが怪我をして帰ってきた。
「どうしたの!?アルミン?」
「あ、・・ちょっと、・・」
アルミンは黙り込んでしまったけれど、誰かにやられたことぐらいすぐに分かった。
「・・誰に、やられたの・・?」
私の心がざわついていた。あんなにアルミンを毛嫌いしていたのに。やっぱりそれでもアルミンは家族で、私がお姉さんだから。
「名前は気にしなくていいよ」
心配させないと、笑うアルミン。こっそりとアルミンのあとをつけてみた。やっぱり数人の男子が寄ってたかって一人のアルミンを殴ったり蹴ったりしていた。アルミンはやり返そうともせず、されるがまま。私は震える手を握り、上唇をぎゅっと噛んだ。なにかが我慢できなくなり、私はアルミンがいなくなったときを狙って、男子に近づいた。
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「名前!」
声に反応して、顔だけ、振り向かせる。私が母に包帯を巻かれている姿を見てアルミンはなんで、と言った。
今度は私が心配させないと、笑みをこぼす。
「見て!アルミン!私もやればけっこうできるのよ!」
そう言ってふふ、と笑う。
「どうして、っ、勝手なことしないでよ!またやり返されるじゃないか!」
「そしたらまた私がやり返してあげる」
「っ!そんな、・・怪我までして、・・母さんもなにか言ってやってよ!」
「言ったわよ。でも、名前が聞かないの」
守ってあげてね、とは言ったけどねえ、と母さんはため息まじりに包帯の巻き終わりの部分を結んでいる。名前はアルミンの涙を優しく拭ってやる。目を見開いていた。
「いいの。私が黙って見ていられなかったの。だって・・」
「名前?」
「私お姉さんだからアルミンを守りたいの」
そう。この日から私は強くアルミンを守りたいと思うようになったのだ。
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