本日何回目かの失態。転けたときにその反動でせっかく順番に並べた書類をぐしゃぐしゃにしてしまったのだ。私だけではなく、周りにいた誰もが冷や汗を流す。転けた先にいるのはリヴァイ兵長。私の上司だ。リヴァイは書類に埋もれたまま、私をギロリと睨みつけてきた。私はその恐ろしさにひっ、と悲鳴を漏らす。けれどそんな態度をとられようと文句は言えないのです。なぜなら冒頭にも書いたようにこれが初めてではないのだから。
「テメー、今日何度目だ」 「は、はい!あのっ、三回め、ぐえ!」 「五度めだろーが!なにテメーの都合のいいよう解釈してやがる!その頭は飾りか!あ!?」 「す、すみま、せ・・」
リヴァイに頭を踏みつけられても口答えはできない。私は涙をうかべ、自分を呪った。なぜか急にリヴァイの顔が見ることができなくなってしまったのだ。 なに言ってんだ、こいつ。と思われるかもしれませんが、しょうがないんです。リヴァイが気になって気になって、顔をあわせると自分の顔が茹であがった状態になるのがはっきりと分かって。胸が苦しくなる。
「リヴァイその辺にしとけ」 「エルヴィン」 「へいちょ、すみません・・」 「出来損ないがさらに出来損ないになったか。」 「う、・・ぐす、っ・・」
仕方ないのだ。言われても仕方が無い。どうしてこんなに気になるのだろうか。早くしっかりしなくちゃ。でなければ私を推薦して調査兵団へと迎え入れてくださったリヴァイに示しがつかない。
「ねえ!丁度良かった!リヴァイに届けてくれない?」 「ごめんなさい!ハンジさん!私もちょっと・・」
なるべくリヴァイと接触することは避けよう。・・と決意したばかりなのに。
「今度の壁外調査だが」 「他のひとに相談お願いします!」
なぜかリヴァイが話しかけてくる。こんなときに限ってどうして?兎に角ひたすら逃げる。自分の気持ちの整理ができるまで。
「おい」 「・・!リヴァイっ・・」
いきなり目の前に本人登場。いきなりすぎでしょ。もう無理。もう駄目。限界。 ぐらあ、と眩暈に襲われる感覚。このままでは危ないと思い、その場から全速力で駆け出した。ぽかんとした表情で、見ていたリヴァイだがもともと寄せてた眉をさらに寄せて、不可解な行動をする部下に心底苛立ちを覚え、チ、と舌打をする。
「ぜってえ捕まえて吐かせてやる」
足の早さは誰にも負けないつもりでいた。けれどあっさりとリヴァイに捕まってしまった。首根っこを掴まれ、思わず変な声をあげる。
「リ、リヴァ、っ!」 「なってねえ下僕には躾が必要だな」 「・・・っ!」
もうダメだ、と観念する。あまりにもリヴァイの瞳が恐ろしいものだから口が勝手に言葉を紡いでいた。
「つまり、そんなくだらない理由で俺から逃げたと」 「はい・・」
やばい。完全に機嫌を悪くさせてしまった。
「不快な思いをさせてしまったのなら謝ります・・どんなお叱りも受けます、のでどうか・・」
黙ったままのリヴァイ。いつくるか分からない痛みにさあ、来い!と目を瞑る。だが、いつまでたっても痛みがこない。そっと目を開ける。、と次の瞬間噛みつくようなキスがふってきた。
「・・っ」
何度も何度も噛みついてくる。唇を噛み千切られ、血の味がする。唇が離れる瞬間、血を舐めとられ、リヴァイの瞳と交わる。
「甘ぇな」
リヴァイの声が響く。ねえ、どうしてこんなことしたの。そう聞きたいのに。口が上手く動いてくれない。相変わらずの表情。じくり、と疼く痛みだけが私を現実へと引き戻してくれた。
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