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「ねえ薫。シフォンケーキってどこにしまったっけ?」
「えー?冷蔵庫の二段めの奥じゃない?」
「あ、あった。」
「しまったの名前じゃん」


柔らかなシフォンケーキを崩してしまわぬようそっと包丁の刃をいれた。さすが皆本さんの自信作。買いたての真っ白いお皿へのせ、生クリームを絞りミントの葉を飾る。大好きな紅茶を淹れて、準備は万端。リビングで待っている薫のもとへこぼさないよう慎重に運んだ。

「食べましょ!」

一口、頬張ればほどよい甘さと食感がなんともいえない。プロ顔負けの出来栄え。美味しすぎて顔を綻ばせた。


「名前はほんと美味しそうに食べるから作りがいがあるって皆本言ってた」
「皆本さんのはなんでも美味しいもん」
「まあ、そうなんだけどさ」

薫の口元に生クリームがついているのに気づく。

「薫。生クリームついてるよ」
「え!?どこっ」

慌ててとろうとするが全然とれてない。名前はゆるりと微笑んで


「ここだよ」


自分の舌で唇についていた生クリームを舐めとった。瞬きを繰り返し、顔を真っ赤になにかを言いたそうにしていた。


「ふふ薫ってば真っ赤。可愛い」


そしてもう一度ちゅ、と軽い音をたてて唇に触れた。薫は悔しそうに名前はずるい、と呟いたが名前にしてみればそれすらも可愛いと思えてしまう。煽ってしまう一つの要素にすぎないのだ。沢山薫の唇にキスしたかったのだけれど


「もっ、もう禁止だかんね!」


、と悲しくも拒否られたので。

ほっぺたで我慢してみた。



冷めた紅茶に花びらひとひら

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