今日は兵部がいない。ユウギリの面倒を任された私はいま彼女と一緒にいる。でも、ユウギリは俯いたままでなにも話してくれない。目も合わせてもらえないし私は嫌われているのだろうか。ううん。あまり好かれていないのかもしれない。まるでヒノミヤといる私のようだ。そう言えば今日アイツはどうしたんだろうか。・・まあいいか。そんなことどうでも。
「ユウギリ」 「・・・・・」
声をかけても黙ったまま。表情が曇ったように見えるし。
「少佐・・」 「え?」
初めて喋ってくれた!ユウギリの目線と同じになるようにしゃがむ。
「少佐?・・ああ兵部ね。兵部は今日はいないの。お姉ちゃんで我慢してね」 「少佐ユウギリおいていっちゃった・・」 「そんなことないよ!すぐ帰ってくるよ?」
また黙ってしまう。これはどうしよう。ユウギリが一人で歩いてどこかへ行ってしまう。あまりにも寂しそうな後姿。・・あ。そうだ。
「ユウギリ!・・お菓子あるよ!えと、絵本も!」
ユウギリはぴたりと止まっておずおずと私を見てくる。やだ可愛い。
「マカロン一緒にたべよう?」
こくん、と頷いたユウギリの手を繋いで部屋へと向かう。紅茶を淹れてマカロンがのったお皿をだせばユウギリは目を輝かせた。一口。噛めば甘い砂糖の味が広がった。カラフルな色合いにユウギリはもう釘付けである。私はそんな姿にふっと微笑んだ。
「気に入った?」 「・・うん」
じっとマカロンを見つめるユウギリ。あることに気がついて私は自分の綺麗なハンカチにマカロンを色とりどりに包んだ。
「これは兵部に、ね」
そう言えばユウギリはぱあ、とそれはもうとてもとても嬉しそう。やっぱりそうか。兵部にあげたかったんだな。私ははい。とハンカチをユウギリに手渡す。ユウギリはなにか言いたそうにしていた。不思議に思いどうしたのかと問いかけようとしたとき。
「ありがとう」
ユウギリは恥ずかしそうに呟いた。どうしよう。なんかくすぐったい。
「どういたしましてユウギリ」
ユウギリが初めて笑ってくれた。ああ。今日はとてもいい日かもしれない。
シフォンの睫毛
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