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「佐助ー!」
「伊佐那海」


まただ。またあの二人中良さげにしている。名前は佐助と伊佐那海をじ、っと見つめた。無邪気に笑う姉様はいつもと変わらない。だけど佐助くんは違う。分かる。表情が優しいもん。胸全体に黒いもやもやがひろがって、自分がもやにのみこまれてしまいそうな感じがした。どうしてなのか二人が一緒にいる姿を見ると自然と険しい表情になっちゃう。だって、佐助くん口を開けば姉様、姉様って。姉様とばっかり。なんかつまんない。

「名前」

佐助くんに声をかけられ、肩が変に揺れる。
姉様と別れ、一人になった佐助くんが近づいてくる。距離が近づくにつれていつもは思わないのに佐助くんから離れたいと思ってしまった。

「名前、今、暇?」
「ごめん、佐助くん」

す、と佐助くんの横を通り過ぎる。顔をあわせないようにしたから変に思われてないといいな。だが、そんな私の予感は虚しくも的中した。


「え?」
「名前に避けられてるかもしれないって、佐助が言ってましたよ」
「佐助くんが?」

名前はやっぱり、と思った。この前の態度が気分を悪くさせてしまったんだ、きっと。でもあれは、


「名前はなにを怒ってるんですか?」

よほど酷い顔をしていたのか。六郎はため息を吐き、少し呆れたような表情をしていた。

「・・べつに怒ってるわけじゃないもん」
「では、どうして佐助を避けるんですか?」
「なんで・・!?」
「見ていれば分かります。佐助が気の毒ですね」
「〜!六郎には秘密!」

頬を膨らませるわたしに六郎は笑う。頬を赤くそまらせたわたしの頭を撫でる六郎にもうっ、とさらに頬を膨らませるのだった。

「名前!」
「わっ!?」

六郎の部屋からでると、同時といっていいほどのタイミングで佐助くんが現れた。心臓に悪い。

「今日は姉様とは一緒じゃないの?」
「伊佐那海、才蔵と一緒」
「そう」

その言葉を聞いてほっとしてる。

「森、いく?」
「なんで?」
「子供、産まれた。可愛い」
「ふーん」
「名前、もしかして、・・不機嫌?」

もしかしなくても不機嫌だよ。

「ふーんだ、どうやら佐助くんは姉様と一緒にいる方が楽しいみたいだし」

「否。我、名前といる方が好き」
「え、・・」

たったこれだけでさっきのもやもやとした気持ちなんか吹っ飛んじゃう。わたしって、なんて、単純。



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