ショートショート | ナノ



10:43 宮田


!)姉弟愛ですご注意ください。






「はよ」

朝起きてリビングにはいると姉さんだけがソファに座って新聞を読んでいた。なんとなく体が重くて痛いのは昨日の試合のせいだろう。今日は疲れをぬけと言われてもらったオフだが、生憎休んでなどいられない。適当に軽く体を動かして汗をかくぐらいいいだろう。むしろやらないと気持ちが悪い。いまなら誰にも知り合いに会わなそうな時間帯だし、身支度を進める。問題は父さんだが、その父さんの姿がなかった。

「・・・父さんは?」
「もうジムに行ったよ。一郎にしっかり体休めとけ、だって。」


とりあえず、よし、と心の中で思った。そろそろと家をでようとしていたら姉さんに捕まった。

「こら。どこに行くの」
「どこだっていいだろ」
「わたし一応監視役なの。一郎が練習にでかけたら怒られちゃう」
「知らねえよ」
「ロードワークとか公園でシャドーとかやりに行く気だったでしょ」

一郎の顔色が、変わる。それに目を細めて息を吐いた。どうやらあたりらしい。

「どんだけ察しがいいんだよ」
「お姉ちゃんにはなんでも分かっちゃうんです」
「ったく、わかったよ」

してやったりとにんまり笑う姉さんの横に腰掛ける。ぎしりと音が鳴って、なんとなくだけど雰囲気が変わった一郎に不思議に思い首をかしげる。一郎との距離が近い。もしかして、久しぶりにしたい、のかな。それはあたりのようで顔が近づいてくる。慌てて顔を背けると今度は覆い被さるよう、余計距離を縮めた。

「い、一郎?」
「父さんいないし、たまにはいいだろ」
「・・・う、うん」

目線を逸らすも、一郎に顔を向けられて唇が触れる。本当は姉弟でこんなこと、許されることじゃないって分かってるんだけど。わたしと一郎は恋人になった。

「っ!」

口の中に生温かい違和感に体が強張る。

「口開けて舌だして」
「・・・」

小さな舌を絡めとる。だんだんと力が抜けていってソファに身を預けた。容赦ないキスに次第に甘い吐息が漏れ始めて息の仕方さえ思い出せなくなってしまう。

「いちろ、キスながい、よ・・・」
「久しぶりなんだからいいだろ」
「ん、」

唇をぺろりと舐めた。そのまま来ていた衣服のボタンを外す一郎の手を慌てて止めた。制止をかけられたことにより、不機嫌に眉間に皴を寄せる一郎。

「なんだよ」
「だめ・・・」
「は?」
「ここ、じゃやだ。ソファ痛いし、狭いし、前最中に落ちたし、ムードもないし、父さんいつ帰ってくるかわかんないし」
「わかった、わかった、俺の部屋でいいか?」

こくん。と頷くと一郎は軽々と横抱きした。脱いでるときもそうだけど、こうしてるときはやっぱり一郎は男の子なんだなあって実感する。昔は女の子みていで可愛かった一郎もボクシングを始めて鍛えて、しっかり筋肉がついて、もう立派な男の人。わたしを抱えながら一郎は自分の部屋まで歩いていく。その横顔を見ながら久しぶりにするから手加減なんて一切ないんだろうな、と若干逃げ腰になっていた。けれど、一郎に触れたくてたまらないのも、一郎を感じていたいのも、めちゃくちゃにされても構わないのも、やはりそう思ってしまうのだ。一郎が好き。たとえ許されなくても、ずっと一緒にいられなくなっても、絶対離さない。

いまだけは、わたしの一郎。わたしだけの、一郎。



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