ショートショート | ナノ



15:31 間柴


これの続き.一応。


仕事中であろう間柴さんと出会った。

(間柴さんだ!もうお仕事あがりかな?この間のケーキのお礼結局あの後帰ってこなかったから言えなかったし)

声をかけていいのかな。でも鬱陶しがられそう。いやでも今逃したら一生会えなくてお礼が言えない気もするし。・・・いいかな、いいよね?よし!と両拳を握りしめて気合いを入れる。さあゆくぞ。

「まっまし、ま、ま間柴・・・さん!」

ギロと鋭さ増した眼孔がわたしを捉えた。うう、やっぱり怖い。いや、ここで諦めたら折角声をかけた意味が無くなってしまうではないか。それにここで少しでも仲良くなって、好感度上げて、また遊びに行けるような仲に。クミちゃん抜きで会えるようになれたら、ってのが本音だけど、まずはお互いを知らなきゃ。勝手に膨らむ妄想を打ち消して、同じように睨んでみたが、相変わらずの顔で表情がピクリとも変わらない。

「・・・お前は確かクミの」
「こ、こんにち、はっ」

もしかして覚えててもらえた?この間一回だけしか顔を合わせなかっのに、あれだけで。・・・やった。

「あ、あの、一言お礼が言いたくて・・・この間はケーキ、ありがとうございました。」
「なんのことだ。」

間柴さんは顔を逸らした。あれ?照れている?なんだか思っていたより居心地悪くない。怖く、ない。これはいろいろとチャンスなのでは。えっとえっと、お仕事いつ終わりですか、一緒に帰りませんか、もしよければご飯でもどうですか。言いたいことが多すぎてまとまらない。何が伝えたいのかもも。悩んでいると後から同僚の方が呼ぶ声にはっとなる。ああ、タイムリミットだ。しゅん、と肩を落として帰ろうとした。今度はいつ会えるかな、なんて図々しくてそれすら聞けない。わたしってなんて情けない。せめて謝って帰らないと。

「仕事の邪魔して、ごめんなさい。頑張ってくださいね。」
「おい」
「え・・・?」
「あの中で何が気に入った」
「・・・え、え?」

なんのことを言われてるか分からずオロオロと返答に困ってると、チッと舌打ちが聞こえて、顔を青ざめた。ど、どうしよう。気に入った、ってなにが、・・・あ、もしかして、ケーキの話?きっとそうだ。

「間柴さん!あの、よければですけど!美味しいお店知ってるんで、今度・・・一緒に買いに行きませんでしょうか!?」

なにこの変な日本語。恥ずかしい。・・・あ、今一瞬間柴さんの口元が緩んで笑った気がした。


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