誰もいない夕方の公園。小さなブランコ。
ここはあたしの、特等席。
今日もまた、あたしはここにいる。
小さな公園。小さなブランコが二つと、小さなベンチが一脚、並んでいるだけ。
こんなところでは近所の子供も遊びにはこないだろう。あたしだったら、自転車をこいで大きな公園まで行くか、家の前で小さく遊んでる。
実際、あたしがこの場所を見つけてから今まで、小さな子が遊びにきているのを見たことがない。
いつも、あたしだけ。あたしだけの席が、ここにある。
あたしの席はいつも右側だ。右側のブランコに、そっと腰掛ける。
キィ、と小さく金属のこすれる音がした。好きな音。
まだ明るい空。
視界の端に桜の木がうつる。
そろそろ桜の見頃は終わって、散りゆく花びらがひらひらと綺麗だった。
一度、大きく地面を蹴って、ブランコを前に揺らす。太陽がきらきら光るのがまぶしくて嫌だ。
信じられないほど明るい太陽を睨みながら、私はまた、地面を蹴ったのだった。
……たかがブランコ、されどブランコ。
こんなにちっちゃなブランコでも、揺らし続ければ息が上がる。
もう、帰ろうか。
立ち上がり、スカートのお尻の部分を両手ではらう。
日も腰をかがめ始めた頃。
初めて見た人影。
「だれだ、おまえ」
それは、黒いランドセルを背負った男の子だった。
120514
人間関係のうまくいかない女子高生と小学生男子が成長する話が書きたかったけど挫折。
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