死体と私 | ナノ



死体は転がった。


死体はだらりと寝転がり、こちらを見ている。

「ねーねーリカコーこっち向いてー」

死体は足をバタつかせ、潤んだ瞳でこちらを見ている。

「リカコちゃーん聞こえてますかリカコちゃーん」

死体は……、

「リカコ!  おい!  リカコってば!  あたし呼んでるんですけど!」
「黙れ死体!  はやく死ね!」
「ひどい!  死体だから死ねって言われても既に死んでるし!」


ミステリ小説の序章のように転がる死体、エミ。
エミは薄い腹から内臓をさらけ出したまま足をバタバタと動かした。

「静かに! わたし勉強してるんだからね!?」

わたしがそう叫ぶと、エミは茶色の髪を鬱陶しそうに払いながら起立した。腹から腸がはみ出ている。

「リカコ、ここ間違ってる」

どことなくしたり顔なのはスルーしておこう。

「え、うそ、どこ ……ってそうじゃなくて」
「なんだよリカコ。公式間違ってんぞ」
「それより早く成仏してよ。内臓飛び出してるからって、ずっと私の家に住み着くのはどうかと思う」
「飛び出してるもんはしょうがないの!  あたしを殺した犯人を探し出して殺さないと気が済まなくて成仏なんてできやしない!」

エミは気が強い。とんでもなく。
エミは生きてた頃、学校では、いわゆる『不良』と呼ばれていた。
勉学についてはは申し分ない。けれど、この気の強い性格のせいで喧嘩が絶えなかったのだ(男女共に、教師との喧嘩も多かったなあ……)。

気が強い、とは言っても、何事にも突っかかっていくわけではない。自分の感情に素直で、それを貫いているだけ。それが、わたしにとっては羨ましいこともあった。


「でもさ、犯人の目星もついてないんでしょ?」
「つけてきたに決まってんでしょ」
「え?」
「だから、犯人のめーぼーしー」

昔からエミは仕事が早かったことを思い出した私であった。




120514


死体と一緒に探偵する女の子の話が書きたかったけど挫折。

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