一言なのに長いのだから作文はなおさらだらだら、
そのてん手しごと感想お知らせはだいぶん短め。


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これ、そのうち整理してnoteにでも改めて書くつもりでいるから(予定は未定すぎる)以下は下書きみたいなもの。いつもの殴り書き。
『推し、燃ゆ』『桐島、部活やめるってよ』と立て続けに一人称の本を読んでて、というか『推し』でちょっと引っかかったこともあったので『桐島』にしたというのもあるんだけど、一人称視点の小説の描写加減でその視点の持ち主=主人公の設定に沿うか沿わないかでだいぶ違ってくるんだなと。
ちょっとネタバレになるので以下注意。
『推し』の主人公はどうやらADHDか何かあるらしい。病名は出てこないけどそれっぽい描写は序盤からあるし佳境に差し掛かったあたりで「私は病気なんだから普通にできない」と明確に告げる場面もある。かつ高校も学力が追いつかないこともあって中退になる。もともと勉強は苦手だった設定。ただ三人称(=読者=私、というのかな)で見た感じだと集中力はすごくあるし目的があればかなり困難な作業も継続して行える。と、主人公の性質や特質がとても細かく設定してある。
その上で一人称で語られる表現が驚くべき美しさ。もはや詩。失礼な言い方になるが「この子の知的能力でここまで表現できるものだろうか」と感心するのだけど、その違和感が妙に心地よい。
そこで気づいたんだけど「一人称=主人公」だとしてもその能力は描写に制限をかけない、ってことなのかな?と。
主人公の視点というか感覚を作者が言語化して一人称に変換……という形式というか手法なのかな、と。
主人公の能力がそのまま文章になっている例だと『アルジャーノンに花束を』がすぐに浮かぶけど『推し』はそういうのじゃないもんな。というか『アルジャーノン』は主人公の能力の変化が主題でもあるからあれはあれであれしか表現方法が無かったとはいえ特殊すぎて比較対象にならない。
でも何というのか、『推し』の主人公の子はADHD(仮)であっても、むしろそれであるがゆえに気づける様々な微細な空気や音や身体感覚があって、そういうものをいちいち言語化しないのは定型でも同様なのだけど、言語化していないだけで感知はしているというその繊細さが何だか圧倒的だと感じたのです。うまく言えない。たとえば胃の動きとか。私は胃のことなんて痛い時じゃなきゃ考えないんだけど、主人公は食べた時とか横になった時にも胃について触れていて、それは一人称でもあくまで作者による描写ですよってことだとしても「いや、この主人公なら感じてそうだよな、胃の動き」と思わせる何かがある。ところで私は軽度のADHDです。あくまで診断上は。
一人称で語られる世界の情景にしっかり濃淡があったり独特だけど分かりやすかったり、「小学校時代から国語も苦手で未だに漢字も手書きだとよく間違えるし最終的に学力不足もあって高校中退になる」という設定と噛み合わない描写力でありつつ、装飾している感じはまったくしない。本当に作者による言語化なのか判断に迷う。そういうところがすごい。
で、『桐島』なんだけど、こちらは数人の高校生がそれぞれ章ごとに一人称で語る話。人によって桐島との距離感がまったく違うから中には「桐島」のことは一行しか語らないこともある。それはさておき、全員が一人称視点で、違ってくることと言うと桐島との交友度と一人称(私、あたし、僕、俺)なんだけど、描写もその人物らしいもので留まっている。十七歳、高校二年生の話だし、スクールカーストがテーマの話だし、高校という枠組みの中でものごとを完結させていく以外どうすれば良いのかわからないしそういうもどかしさを描いた話でもあるから一人称=その人物の能力の範囲内での描写が好ましいということでもあるだろう。
たとえば『推し』では一人称の文体の中で主人公が母親や友人のことを「彼女は」と表現したりするけど『桐島』でそれはない。母親のことは「お母さん」だし友人はどこまでも「あいつ」「(名前)は」で、「桐島、部活やめるってよ」の調子そのままでモノローグも表現もまとまって物語は進む。そして終わる。登場人物の感覚を作者が言語化した印象は全く無い。言語化しないままいかにも拙い十七歳たちを描ききったところに『桐島』の良さがあるとも言える。
結局、文章を一人称にするか三人称にするか決める根拠って何だろう?と改めて考えた。
『推し』のギャップに気づいたあたりで「三人称で書かなかったのは何故なんだろう」と思ったりもした。ラストまで読んでそのギャップがすごく良かったから一人称で書いてくれてありがとうとさえ言いたくなったけど三人称視点のバージョンも読んでみたくなる。『推し』なら。
って書いてて『推し、燃ゆ』なんだよなー、タイトルが。と気づいた。桐島、部活やめるってよ、というセリフは本文中には出てこない。でも誰かがそう言っても全く違和感がない。『推し』の主人公ちゃんは少なくとも「推し、燃ゆ」とセリフでは言わないだろう。言わないけどネット上のコミュニケーションのスタイルで書きそうではある。『桐島』がまだギリギリガラケーの時代で(初出が2010年)、『推し』はスマホなしでは進まない去年、おととしぐらいの現代という差もあるからそこを念頭に読み比べるのもアリなんじゃないだろうか。再読するなら。
そんなこんななくっそ長いだけの下書きなのでオチはない。

220822 1335
感想


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『桐島、部活やめるってよ』読了。
有名なタイトルなのに読んだことも観たこともなかった。読んだおかげでもう「桐島部活やめたってよだっけ?」とか言わずに済む。中島部活やめるってよは言うかもしれない。本文はともかく解説でちょっとイラッと来てしまい、しかもそれを書いたのが映画の監督さんらしいから映画は観ないでおくべきか悩むところ。

220821 1836
感想


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前から気になっていた『推し、燃ゆ』を読んだ。
すごい本だった。いやもう、すごいわ。これはすごい。
これがめちゃくちゃ売れるんならまだまだ日本も安泰なんじゃないかな。
すごすぎて抜け殻状態なので読了直後の今の感想は「すごい」としか言えないところがまたすごい。完全にやられた……すごい。

220819 2158
感想


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今週の同人女の感情更新、リプも引リツも見事なおけパ祭りでめっちゃ笑う。かくいう私も読んでて「来たかおけパ」ってなったから同意しかない。
おけパがどうやらネイルアーティスト(?ネイルサロンスタッフ?)らしいから七瀬さんのペンを拾ったコマで指が見えてれば確定していいんじゃ、と読み返してみたらさすがにおけパ(仮)の指は描きこまれないようになってたね。ますます高まるおけパ疑惑。そして三期は綾城さん出番ないのかもな〜って思ってたところへ降臨なさっておけパ以外ぜんぶもってかれた。

220814 1247
感想


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「その本なら高校生の時に読んだ」とか「ラノベは十年前に卒業した」みたいな話をする人から本の感想を聞いたことがあまりない。「で、面白かった?」と聞いてみても「高校生だったんだよね」としか返ってこないことが多いからさすがに私も学んで今ではおとなしくその人の情報としてのみ処理している。たまにやや古めの映画を観て「この年までこんなに楽しい名作を知らなかったなんてめちゃくちゃラッキーだなあ」と思ったりする。どういうことかはうまく言えないけど初見の感動に対する喜びというか。若い人が「バック・トゥ・ザ・フューチャーすごい!」って興奮してるのを見ると無性に嬉しくなるし同時にうらやましくもある。もちろん何度みても「おお!」ってなる映画は沢山あるし色あせないとはまさにこのことなんだなとしみじみするけど初見の衝撃は格別なんだよね。昨日の夜、カミュの『ペスト』を読み終えた。一週間かかった。ものすごく面白かった。コロナ禍でこれを読んだ体験はちょっと忘れがたい気がする。一週間かかったけど一週間ずっと「なんてこった……どうなるんだこれ……」に浸れていたことはまさしく読書の醍醐味。カミュは二十代に『異邦人』を読んで更に三十代で再読したんだけど一度目と二度目では感想も結構ちがった記憶がある。理解度の問題ではない。それこそ高校生の時に読んだカフカは「いきなり虫になる以外いったい何が面白いのかわからない」だったのが三十代になって読むと「ザムザ自身よりも家族の変身はまったく他人事ではない」みたいな戦慄があったりした。「(若い時でなく)いま読んで良かった本」「いま観て良かった映画」というのはしばしば言われることだけど私は若い時は若い時なりの感想や感動があるし(「つまらない」「眠くなった」だって立派な感想)それは国語的な読解力や物語の背景にある文化なり歴史の知識量とはほぼ無関係だと思うんだよね。「若いころ読まずにいて、今こそ読んで良かった本(または映画)」っていうのは仮想でしかないし。未来はわからないものだろうけど意外と過去のことも誤解することが多いんじゃないだろうか。「若いころ読んでも理解できなかっただろうから」というのがそういった人たちの概ね合致する理由らしい。「理解できない楽しみ」の価値はいつの間にそんなに目減りしてしまったんだろう。「いま理解できないなら数年後には理解できるようになるかも」とする期待はほとんど希望と呼んでも良いくらいのものだし、初見、初読の落胆は初見の「すごい!楽しい!やばい!」以上に取りかえしのつくものなので、むしろ若い内に体験してほしいなとすら切望する。以上、カミュ『ペスト』の感想でした。なお「若いころに読まないでいて、観ないでいて、良かった」という感情を否定するものではないことだけしっかりと書き添えておきたい。

220811 1247
感想


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