隣にいるのに心理的距離がある、というのは実におかしく、不可思議で、しかし寂しいものだということを俺は痛いほどに知っている。

あいつはよく笑う奴だった。よく俺の頭を撫でる奴だった。だけど自分の意思を貫く強い奴だった。だからか、あいつは俺を一度も愛そうとはしなかった気がする。というよりもまあ、出来なかったんだろう。だって海軍だったんだからな。あいつが海軍だと知ったとき、まだあいつは俺の隣にいて笑っていた。「私もエースみたいに食べながら寝れるかなあ」と『わくわく』と効果音が出そうなくらい微笑ましい表情で食べ物を食べてた覚えがある。

「今までありがとう、って言ったら怒る?」

あの時、珍しく俺の部屋に来て真剣な顔をしたあいつが俺に問いかけた質問。ああ、ついにこの時が来たんだな、と思いながら俺もあいつを見つめ返した。今思い返してみれば、俺はよくこの時冷静でいられたと思う。

「…怒らねェよ、」
「嘘、だ」
「怒らねェって。だってお前はずっと俺の傍にいるだろ」

この言葉があいつの心をどれだけ締め付けるかなんて俺には分かってた筈なのに、言ってしまった自分は無神経だったなと今更ながら思う。俺の前でうっすらと涙を浮かべ、俺をまっすぐと見つめるあいつは何だか今にも崩れ落ちちまいそうで。気付けば俺の唇はあいつのそれと重なってて。そしてそれと同時にあいつの涙もあいつの目から溢れた。


我慢出来ずにキスをした

離れると分かってるのに離れられない馬鹿で愚かな俺達。




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エースで「我慢出来ずにキスをした」。
Loving!Love!Loved!様へ提出。
(20101112)



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