「私もトランスフォーマーになれたらいいのになあ」


基地に持ち込まれたと思われる、おそらくスパイクの物だったドーナツを頬張る。また一口、大きく頬張る。甘い砂糖のコーティングで手がべたつくのもお構いなしに次のドーナツを箱からひっつかむ。


「やけ食いかね」

「お腹すいたの」


空腹なのは事実だ。しかしこんなに急いで大口で食べる理由はない。スパイクはまだこの箱に手を付けていなかったみたいだけれど、しばらくカーリーは大学が忙しいようだし、スパークプラグも仕事だ。基地に出入りする人間は私くらいだ。ドーナツを独り占めしたって怒るのはスパイクくらいだ、へっちゃらだ。

パーセプターは今日は私に構ってくれることにしたらしい。いつもはマイクロチップのケアをしているのに手持ち無沙汰な私が文句をぶつけるだけなのだが。こんなときだけ気を使ってくれるくらいなら普段からもっと構って欲しい。ドーナツをバカ食いするだけで彼の興味がひけるなら明日から私が自分で買ってきても良い。


「トランスフォーマーになれたら、もっと近くで、話したり触ったり役に立ったりできるでしょ。そうならないから、お腹が空くことにいらいらする」

「しかしそんなに急に摂取しては栄養バランスが崩れてしまうよ」

「崩れてしまう造りなんだから仕方ない」


パーセプターは、何か言いたそうに口をむぐむぐさせていたけれど、ついに私の前にしゃがみこんで、抱えていたドーナツの箱をつまみ上げた。


「私ならきっと、君を我々と似た存在にできるよ。でもね、そうしないのは、人間である君が一番君らしいからだよ」


わかったら、これはもういいね。そう言って箱を冷蔵庫にしまいこんだパーセプターは、もういつものようにマイクロチップに御執心だった。

かーっと胸が熱くなって、喉の奥が詰まった。パーセプターの足に抱きついていると、いつもの声色で「あぶないよ」と言われたけれど、あのドーナツの箱みたいにつまみ上げられはしなかったから、こういうのは幸せというのだと思った。