カカシが上司なことに甘え過ぎていた自分を自覚するのは恥ずかしかった。それでも途端に未来が見えなくなってしまった焦りが湧き上がってきてどうしようもない。

半年だ。

たかが、半年しか経っていない。守られていた独房から、好奇と恐ればかり突き刺さる世間に放り出されて以来、私はちっとも平気になどなっていなかったのではないだろうか。

文字通りカカシに守られて、世話されていたのではないだろうか。自分は殺人者だと開き直り始めたかと思ったが、いざ彼が暗部を抜けると知った途端に、確立しかけていた途方もなく脆い檻が壊れてしまったように感じた。

それでも足は彼の部屋へ向かっている。

情けをかけてほしいわけじゃないのに、ただ寂しいと思った。きっとここへ来るのは今日限りにしよう。明日からは、彼を必要としない自分にならなくてはいけない。

彼を真に必要としているのはうちはサスケに間違いない。彼は私にとってのハヤテなのだ。取り残された被害者なのだ。今まで、加害者である私が守られていたことの方が、可笑しなことだったのだろう。そう割り切ろうとした。

だのに、


「君の危うさは俺が作ってしまったのかもしれない。勝手に頼らせて勝手に去っていく無責任さを、許してほしい。」


ベッドに横たわりながら私を初めて抱きしめた台詞が、あまりにも離し難かった。この熱さをあの日も味わった。生きている人間が持つ灼熱だ。

今日はこの熱の顔が見える。

美しい銀髪、赤い左目が僅かに潤んでいる。私は堪らなくなってしまって、今まで堰き止めていた感情が涙ごと流れ出すのをついに許してしまった。


「カカシさ、ん、」


ああ醜い女だ。酷い女だ。

勝手に弱みを握らせて、彼の責任感を利用している悪い女だ。幼さなど理由になりはしないのに、狡賢く彼の優しさに浸け入っている。

カカシとの口付けはまるで焼け付くように熱く、苦しく、自らの罪の石を重ねるようだった。外は雨が降り出していた。