ナマエさんって、僕らには冷たいかもしれないけど、でも酷いこと言ったりなんかは一度もないんだよね。ただすごく、一線引こうとしているんだなっていうのは感じる。責任感が強いんだろうなとは思ってたけど、やっぱりそうみたいだね。

この間、プログラミングでどうしてもわからないところが出てきて、ナマエさんにダメ元で聞いたらあっさり解決しちゃったんだ。やっぱりエージェントってだけあってすごく能力の高い人なんだよ。だから一人でなんでもこなしてるし、僕らが知らない努力をたくさん積んでるんだろうね。

そんなにしてオートボットや地球の為に働いてる人が、悪い人なはずないよ……。ジャックだって、もう気づいてるんでしょ?僕らから歩み寄らなきゃね。



イヤホンを外してようやく、ジャックはソファの隣に話題の中心であるナマエ・ミョウジが座っているのに気付いた。慌ててポケットにコードをしまい込む。不審そうにそれを見届けたナマエは、いつものように黙々と報告書の作成を再開する。おそるおそる、ジャックは彼女に声をかけた。


「書き終わったら、僕はどくんで、ここで寝てください。疲れてるでしょう」


ナマエは驚いた表情を隠さなかった。今までせわしなく動いていたペンを握る手を留め、ジャックを凝視した。ゆっくりと唇が開き、ぎこちない感謝が聞こえると、ジャックは胸を撫で下ろしながらアーシーの元へ降りて行った。ジャックを乗せて彼の家へと向かうためバイクにトランスフォームしたアーシーが、ラチェットに言う。


「それじゃあ、一時間後に起こしてあげてね、ラチェット」


その声はどこか嬉しそうで、オートボット看護員も快く「ああ、おやすみ」とコンソールをいじる手を留めて静かな笑顔を見せた。

何やら気恥ずかしくなる。温度が上がった頬を手で覆いながらソファに横になるナマエを、誰もが愛おしげに見つめた。