ナマエとはよくラチェットに隠れてドライブをしたものだ。我々のおかげで、必要な休息も取れていないことが申し訳なかったから。……いや、今でも無理をさせてしまっているか。

しかし以前より個人的な話をしなくなった。我々への責任を感じているのだろうけれど、私としてはそれは望ましいことではない。彼女もプロとして地球の任務を全うしようとしているのはわかる。その上で、彼女の人生をそれだけにさせたくはないんだ。

本来人生のパートナーとは人間同士でなるもので、彼女にも人間らしい人間関係を持ってほしいとは思っているんだが……。

しかし、ラチェットとは良いパートナーだと思っているのも事実だ。彼女が我々に与えてくれた情報が無くては、地球で過ごすに必要な知識を得られなかっただろう。まずはじめにスキャン用のビークルを手配してくれたのも彼女の発案だ。彼女はよく頭が回るし、気が利くし、仕事の効率も良いからつい頼ってしまうが、我々が彼女を拘束してしまうことは、うん……やはり良い考えではないな。

ただ、最近一度だけ、彼女が私の事を間違えて呼んだときは驚いたな。「お父さん」だったか。彼女もやはりまだ若い人間なのだと再認識したよ。心の中まで冷たく凍ってはいないようで、安心した。



ボイスレコーダーで再生される音声を聞きながら、ジャックは溜息をついた。

ファウラーの直属の部下であるナマエ・ミョウジという鉄面皮の美人が、まさかそんなふうに認識されていたなんて。

オートボットたちとも出会って日の浅いジャックは、実は彼女に不信感を覚えていた。子供たちに対し威圧感のある態度と口調は、ティーンにとって微妙な存在だ。美人であるぶん、余計近寄りがたい。

しかし、相棒であるアーシーに諭されて各人に尋ねてみれば、自分の抱いているのとは全く違う印象をそれぞれが持っていたことがわかり、混乱する。

あの、明るい髪を短く切りそろえたパンツスーツのキャリアウーマンの正体がますますわからなくなった気がしたのだった。明日もまた話を聞こう。