かわいそうなナマエ。俺はお前を、どうにもできなかった。期待ばかりさせて、しかしどうにもできなかった。俺がお前を変えられなかったのは、それは、お前が変わりたくないと思っていたからなのだ。
どうしても、お前の心が読めてしまう俺には、人間がどうあるべきかを知らない俺には、お前が望むままにさせることしか、できなかったのだ。
お前が俺に、何かしてほしいと願いながら、それがどういうことなのか最後までわからなかったことを知っている。変われるかもしれないと思いながら、変化を恐れていたことすらも。
ワールドワイドウェブに接続する。数々の教育者や哲学者の名前がヒットした。その誰かが彼女を幸せにしたかもしれない。生死は関係なく。死んだ偉人とよばれる人間のいずれかの言葉が、彼女に何かを与えたかもわからない。
しかしその誰でもなく、お前は、この、卑劣な、デストロンに、出会ってしまったのだ。そこに、希望のようなものを、見出してしまったのだ。
基地に帰ると、フレンジーが不安げに俺を見上げた。「サウンドウェーブ、何かあったのか?」何もない。何でもない。そう、何でもない。何度も繰り返し返事をした。まるで自分に語るようだった。
何者かの死なんて数えきれないほどの年数、数えきれないほどの数を見てきた。彼女もそのなかのひとつに、過ぎないと、考えなければ。今まで散ってきたスパークと同じように扱えなくては。そうだ、何もかもが数か月前に戻り、俺はあの物置に通わなくなる。それだけだ。
「今マデ通リダ」
寸分も震えていない、いつも通りの声を聞いて、フレンジーが安心したように、そうか、と笑顔で相槌を打った。