「近頃のサウンドウェーブはどうも可笑しい」
俺は懐疑心を露わに他のデストロンたちにぼやいた。またか、というような顔でスカイワープは手のひらをやる気なさそうに振る。自分より背の低い紫色のカセットロンを存分に見下ろしながら吐き捨てた。
「あいつがどうしてようが俺たちには関係ない。仕事さえ回ってりゃあな」
「にしたって、毎日毎日俺たちカセットロンを置き去りに出かけるなんてどうかしてる」
「そりゃあいくら自分の部下っつったって、いつでもべったりはないだろう」
「何百万年も一緒に居て今頃これかい?信じられないね」
ジャガーやコンドル、ラットバットなんかは外に出る時間が増えて嬉しそうだ。しかし俺とランブルのふたりはそうずっと能天気にしてもいられなかった。あまりにも習慣化してマヒしてしまいそうだが、今までのサウンドウェーブじゃ絶対にありえないことだ。
ここ数カ月もの間、サウンドウェーブは俺たちを全員イジェクトしたままどこかへ行ってしまうのが続いていた。最初はメガトロン様からなにか任務を請け負ったのだろうと解釈していた。
けれど、あまりにも頻度が高いし、それに当のメガトロン様もそれを把握していなかったという。つまり近頃の奇行はサウンドウェーブ本人の意思によるものらしいのだ。今までメガトロン様に忠実に仕え、自分の意志など主張することのなかった彼の、だ。ただごとじゃあない。
スカイワープはあっけらかんとしているけれど、もしこれが大事に発展したらと思うと恐ろしい。サウンドウェーブの管轄はこのデストロン基地において重要な部分のほとんどを占めている。彼が居なくてはデストロンは機能しないと言ってもいい。今日こそは、彼の帰りをしっかり待ち伏せて、問いたださなくてはならない。
そう思っていた矢先。
『フレンジー、今カラ戻ル』
任務中には絶対に出さないような声色(ずっと一緒にやってきた俺だからわかるような些細なトーンの変化だが)の通信が入った。通信回線を通してブレインスキャンしていたのだろう。俺の懐疑心は筒抜けだ。そんなこと互いにわかった上で、何も言わないのだから、やっぱり彼にはなにかある。
ぐにゃぐにゃと考えていたことは、スカイワープに首根っこを掴まれて今日も掻き消えてしまった。