国際警察機構の秘蔵っ子、草間大作くんは何を隠そう私の恋人です。ロボの整備員だった私が、どうして彼とお付き合いすることになったのか、自分でもよくわかりません。
憧れの少年をいつも目で追い、彼が操る機体に関われることに誇りを抱かない日はなかった。そうして気が付けば、目の前に彼がいて、キラキラ輝く瞳いっぱいに私を映していた。
「みょうじなまえさん」と直接彼に名乗ったことの無い自分の名を呼ばれた時には、心臓がはち切れると思った。機械油で汚れた手袋ごと私の手を取って放たれた「すきです」の一世一代であろう告白は、私の心臓に突き刺さってもう一生折れそうに無い。
ずっとずっと私のヒーローで、手の届かない人だと思っていました。
けど、今はこんなに逞しく私の肩を抱き寄せ、額に口づけをしてくれます。彼は17歳。地球を救ったあの日から、5年の月日が流れていました。それでも私なんて彼からしたらおばさんじゃないかしらと落ち込んだりもします。
「なまえさんは僕にとって、世界一かわいくて、世界一大好きな女の人です。だから悲しいことは言わないで」
「でも大作くん。私、たまに自信がなくなってしまうんです。あなたとても、本当にとても沢山の人の憧れなんだから」
「うーん、どうしたら、自信を持てるんでしょう。キスやハグでもする?」
「は、恥ずかしいです」
目を逸らしたら、ぐいと頬を掴まれて、あのころとずっと変わらないキラキラ輝く瞳が目の前いっぱいに拡がりました。漆黒の中に瞬く銀河みたいな。その中に私は、ずっとずっと、溺れ続けているのです。