「スモークスクリーン、君が運命の子なら、君のパートナーである私は何なのだろうか」
口元に寄せた俺の指の上で、ワンピースから覗く足をぶらつかせながら彼女は言った。まるで独り言でも言うかのように語りかけたのだった。その瞬間、彼女が何を言いたいのかも満足に推理しないまま、ブレインがショートする電流に、ことばまで乗せて吐きだしていた。
「それ、どういう意味?」
驚くほど激しい口調だった。彼女はひどく傷ついたという顔をしてみせるのをアイカメラが認識すると同時に、まずったなあと一気に頭が冷える。どうかしているなあ。今は絶対そんな言い方はなかった。戦いが緊張している今、彼女は基地に自分の居場所を見つけられていないんだ。
「君がパートナーの役を買ったのは偶然で、俺がこうしてるのも気紛れかなにかだと思ってる?」
「スモークスクリーンは、本当に、運命に選ばれた子だと思うから、心配になる」
「自分は俺の運命に関係ないかもしれないって?」
彼女は相変わらず俺の指の上に座ったまま、目も合わさずにうんと言う。それが急に愛しくなって、些細な心配がとても可愛くて、抱きしめてぎゅうっと握ってしまいたくなるのがほんとうにたいへんだ。
「そんな心配しなくても、俺が君を、俺の運命に加えてあげる」
すう、と空気を吸うような仕草は人間を見てまず覚えたことのひとつだった。彼らは大切なことを言うとき、決まって深く息をする。俺たちには勿論必要ないことだけれど、すっかり感化されちゃったなあ、悪くない。
「君の事がだいすきだ。こう言えば、ほら、もう俺だけの運命じゃない」
ぱたぱた揺れる、彼女の両足がぴたりと止まって、唇づけがひとつ降ってきた。