※TF主人公
非道い奴だな、と悪態を吐いた口を無理矢理キスで塞がれるのは何度目だろう。都合が悪くなるとすぐにこういうことをするから、アストロトレインはたちがわるい。それで私がなにも言わなくなるのを熟知しているのだ。
ゆっくり離した奴の顔は、やっぱり薄ら笑いを湛えている。ああむかつく。
(私の報酬借りといて、踏み倒せると思ってるの?最初は何年前だっけ?利子の約束もしておけばよかった。
あんたは私を都合の効く軽い女と思ってるかもしれないけど、その調子じゃいつか背後から刺されるからね......)
言いたいことが山ほどあったはずなのに、この男の赤い瞳は訳知り顔で、続きを迫ってくる。
普段は暴れまわってばかりの厄介者で、メガトロンさえ手を焼いているというのに、キスだとか、そういうことをするのは酷く上手だ。
表面温度の上がった唇が角度を変えて何度も啄んでくる。細まったオプティックから洩れる光がじわりと視線に絡まっている。私の排気が荒くなってくると、唇を離して今度は頬を大きな手で撫で始めたので、いよいよ恥と屈辱とで私は憤慨した。
「ちょっと!」
「まあ待てよ、してからでも遅くない」
力強く引き寄せられてまたキスの波に溺れていく。こいつ、トリプルチェンジャーって以外にも、そういう、麻痺効果、とか、なにか、能力が............
「今日は仕事の話は抜きで、楽しもうぜ」
そればっかり、と言う手段も失ったまま、また明日が来てしまうのか、とうんざりする思考が面倒になってきた。本当に今日までだ。今日まで。今日だけは許してあげよう......