「俺、お前のこと好きだ」
「えっ……」
放課後、太陽が斜めに光を指し始めた教室で、一緒に週番の当番だった奴に、押し付けられるように渡された日誌を書いていた。
書かなくてはいけなくなってしまい、肩を落としていると、親友のアキは、一緒に残ってやると、俺の前の席の椅子を一八〇度回転させ、俺に向かい合うように座って待ってくれている。
すると、話が途切れできた沈黙をそのアキが、何か言い断ち切ってくれるかと思えば、その言葉は、あまりにも衝撃的過ぎて変な声が出てしまった。
「マジで?」
「マジで」
焦りや緊張で少し上ずった声で訊くと、頬杖をつきながら座っているアキの眼は、窓の外のグラウンドから移動し、まっすぐ俺を見た。
「本当の本当?」
「ほんとのほんと……って、高須!?」
「うえっ……で、でも〜!」
突然泣き出した俺に驚いているアキに構わず、泣き続ける。
「でも……だって、アキこの前きもいって、俺のことふったじゃんかぁ〜」
俺とアキは、所謂腐れ縁というやつで、中学の時からずっと同じクラスだった。
自分でも、いつから好きになり始めたのかは分からないけど、気付いたら、アキのことを目で追うようになっていた。
アキに、このことを言ったら、もう一緒に居れないだろうと思って押さえていたのだが、抑えきることができず、二週間前ついに告白をしてしまった。
案の定、俺の必死の思いは、『きもい、無理』とあっさりとふられてれしまった。
しかし、まるで告白がなかったかのように、いつも通りの生活をついさっきまで送っていたのだった。
アキは、おもちゃを買ってもらえなくて、駄々をこねている子供のように泣く俺の涙を、制服の袖からはみ出したセーターで拭いてくれる。
「あのあとから、お前のこと気になり始めて、本当は、前から好きだったんだなーって気づいたんだ……今更だけど、だめ?」
「そんな、この二週間で何年も好きだったやつ嫌いになるわけないじゃんかぁ〜。ばかぁ〜」
必死で止めようとしていた涙は、さらに勢いを増して、溢れでる。
「うん、ありがとう。好きだよ、圭」
アキは、俺の顔を両手で包み、額に優しくキスを落とした。
温かい手の中で、俺も答える。
「俺も好きだよ、弥央」