夢うつつ | ナノ





ああ、どうしよう。
全然楽しくない。


あれから、いろいろなアトラクションに乗った。
幸村が行きたいって言ってたジェットコースターにも乗った。


けど、幸村の機嫌はよくなる気配しない。

相変わらず私の方を見ようとしないし。


「まだ怒ってんのか?」
「……うん」
「小せぇ奴だな」


そんなこと言ったらもっと機嫌悪くなるじゃん。
そう思って、肘で政宗君をつつくと、気付いたのかsorryと謝ってきた。



どうしたら機嫌よくなってくれるわけ?
何が不満かわかんないし。
幸村より政宗君の言うこと聞いたり、政宗君と仲良くしてたから?

やきもち妬いてくれてるならちょっと嬉しいけど。

……まぁ、私の憶測でしかないから、本当に妬いてるかどうか分からないから多分ぬか喜びだろうね。



私が、悪くなってる場の雰囲気に溜息をつくと、政宗君が、何かを思いついたように声を漏らした。

「あ」
「なに?」
「Good ideaがある」
「アイディア? 幸村の機嫌が直るの?」
「That's right! 行くぞ!!」
「ちょっ……!」



政宗君は、私の手を掴んで走り出した。

何でだろう、嫌な予感しかしない。
それより、幸村ついてきてるかな。

後ろを振り向くと、飛んでついてきてた。
目があったけど、逸らされたよ。

さすがに傷つくんだけど。









「ここだ」
「え、ここって観覧車じゃん」
「Yes.乗るぞ」


そう言って空いてる観覧車に乗った。
まだ昼過ぎたところだから、空いてんのかな。
観覧車はやっぱり最後に乗る乗り物だしね。




「なんで観覧車?」
「Ahーそりゃ頂上についてからのお楽しみだ」
「頂上?」


なにそれ。
頂上に着いたら幸村の機嫌が直るの?




「幸村はどこにいる」
「んーゴンドラの外で景色見てる」



私たちのゴンドラに合わせて飛んでる。
中から見てもいいのに。

わざわざ空気に座るなんてしなくていいのに。

ゴンドラの外で浮きながら背を向けてる幸村を見て思う。



「あ、もうすぐ頂上じゃん」
「そうだな。じゃあやるか」
「なにを?」


聞いたけど、政宗君は何も言わずににやりと笑った。

何その、怪しい笑みは。


「Hey,幸村、look at us」


そう言うや否や、政宗君は私の頬に手を添えて、顔を近づけた。


「え……?」


これって、キスされ……!
これから起こることに動転して、目を瞑る。

ファーストキスなのにっ……!



「ん……?」



……あれ?
いつまで経っても、唇の感触がない。

うっすらと目を開けると、政宗君が至極楽しそうに私を見てた。


なに?
政宗君は何がしたいの?


分からずに、固まっていると政宗君はわざとらしくリップ音を奏でて離れた。

「知ってたかなまえ」
「な、なにが?」

「ここの観覧車の頂上でkissすれば永遠に結ばれるらしいぞ」
「え?」


何言ってんの?
私たちキスなんてしてないんじゃ……。


「どうするよ幸村。俺達永遠に結ばれちまったな」


のどを鳴らして笑ってる政宗君。

なんで幸村に向かって話してんだろ。
別にキスしたわけじゃないのに、結ばれるなんてありえないじゃん。


幸村のほうを見れば、驚いたようにそして悲しそうに私を見てた。


「ゆき、むら……?」
『っ……!』



声をかければ、ビクッと反応した。

「あ、ちょっ、どうしたの!?」
『さ、先に帰る』


そう言うと幸村は下に下りて行った。


「まっ……!」


窓から下を覗けば、もう幸村の姿はなかった。



「幸村の奴、怒って帰ったのか?」
「怒ったっていうよりも、戸惑ってた感があったような……」


なにが幸村をそんな顔にさせてるのか分からない。



「作戦成功だな」
「なんの?」
「家に帰れば分かるんじゃねぇ?」



曖昧に答えて政宗君はのどを鳴らして笑った。


どういうこと?
家に帰れば答えが見付かるわけ?


分からずにうーんと頭を抱えて考えてみるけど分からない。



「お疲れ様でしたー!!」

うんうん唸ってるときにゴンドラの扉が開いて従業員さんが大きな声で挨拶してきた。

「なまえ、降りるぞ」
「う、うん」


政宗君に手を引かれて観覧車から降りた。

幸村居ないし帰りたい。
けどまだ帰る時間じゃないし。
私が誘っておいて、帰ろうなんて言えるわけがない。


……もう少しだけ遊んで帰ろうかな。


「帰るか?」
「え? いいの?」
「帰りたそうな顔してんじゃねぇか」
「あ……ごめん」


そんなに顔出てたんだ。
政宗君、苦笑いしてるし。

うわ、私ってすごい失礼なことしたよね。



「構わねぇよ。帰んぞ」
「う、うん」



帰ったらちゃんと部屋で待ってるかな。
またこの前みたいに何日も姿現さなかったら嫌なんだけど。


帰んなきゃ幸村に会えないし、帰りたいけどなんだろう、この憂鬱感。


それに、なんか違和感が……。
なんでだろ。




(君が隣に居ないから?)
[ 16/23 ]
[*prev] [→#]
[戻る]
×