最近セブルスはルーピンが信用できないという確固たる証拠を見つけるためか、なかなか会ってくれなかった。 それだけで私の気持ちは沈んでしまう。 リリーはすぐに証拠なんてないって気づいて諦めるわ、と楽観していた。 ルーピンも最近はセブルスに言われたことを気にしてか、絡んでくることはなかった。 今朝会った時にはすごく顔色が悪かった。 ルームメイトがいない自室で呪文の特訓をしていると、リリーは憤りが隠せないのかドアが外れるかと思うほど乱暴に開けた。 失神呪文をクモにかけようとしていた私は余りにもの大きな音にびっくりして、狙いがずれてルームメイトのペットであるヒキガエルにあたってしまった。 失神したヒキガエルは目を開けたまま動かなくなった。 ……まあ、失神呪文は成功したけど、ルームメイトが帰ってくるまでに失神は解けるのかなと心配になった。 まあ、いいか。 この飼い主は私の私物を引き裂いた犯人でもあるし、ささやかな仕返しだ。 すぐヒキガエルから視線をずらして鼻息荒く憤慨しているリリーを見る。 「やっぱり! あの時無理矢理にでもセブに友達をやめるよう言うべきだったわ!!!!」 「り、リリー……落ち着いて」 「落ち着いていられるわけないじゃない! あいつ、あいつがメリーに何しようとしたと思うの!」 怒鳴り散らすリリーに怯みながら、ベッドに座るように促す。 乱暴に腰を下ろしたリリーにベッドは悲鳴を上げたように軋んだ。 「何があったの?」 「あいつよ! あいつがメリーに呪文をかけようとしたの! 普通の呪文じゃないわ! 闇の魔術よ!」 「あいつって誰?」 「マルシベールよ!」 名前を口に出したことでリリーの怒りの炎に油を注いだのか、近くにあった枕を力いっぱい殴った。 中から羽が出てきて宙を舞った。 鋭いパンチに思わず喉が引きつった。 マルシベールといえば、リリーが気に食わないと言っていたセブルスの友達の一人だ。 メリーはリリーの友人でよく彼女と話している。 たしかマグル生まれだ。 リリーの話をまとめると、 前から気に食わなかったセブルスの友達であるマルシベールがリリーの友達のメリーを傷つけようとした。しかも闇の魔術で。ということだった。 「……そうなんだ」 「私が止めに入らなかったら確実に呪文を放っていたわ!」 正直マルシベールとメリーのことはどうでも良かった。 闇の魔術を使っていようが、闇の魔術の被害に合おうが。 リリーが止めに入ってマルシベールに何も危害を加えられていないかどうかの方が心配だ。 けど先程のパンチといいこの怒り方といい、多分リリー自身には何も危害は加えられていないんだろう。 それが分かれば安心だ。 それよりも、またこれがきっかけでふたりが喧嘩しないか不安だ。 もう大切なふたりが喧嘩して欲しくない。 「早くセブに言いに行きましょ! あんな奴と友達なんてやめるべきだわ!」 「ま、まってリリー! こ、今度、今度にしよ!」 「どうして? こういうのは早いほうがいいのよ!」 「今セブルスはルーピンが信用できない証拠を探すのにムキになってるでしょ? だから証拠がなくなって自分が間違ってたって反省してるときに言ったほうがセブルスもリリーの意見が正しいって思ってくれると思うの!」 私が勢いに任せていかにも正しいというように捲し立てた。 怒り心頭のリリーとムキになってるセブルスじゃあ絶対にまた喧嘩してしまう。 それだけは絶対に避けなきゃ。 こんな他人のどうでもいいことでふたりが絶交してしまったら溜まったもんじゃない。 「……そうね。私も気が立ってるからもっと落ち着いた時に話したほうが良さそうね」 「う、うん! わかってくれてよかった」 「ありがとうなまえ。あなたに話して良かったわ」 「ううん。私も話してもらって嬉しかった」 なんとか宥めることに成功して私はほっと胸をなでおろした。 一難去ったと思った次の日。 自室で天蓋カーテンに魔法で鍵をかけて着替えていると、ノックが聞こえた。 ルームメイトが私に声をかけてくることは絶対にない。 不思議に思って魔法を解いてカーテンを開けると焦ったようなリリーが立っていた。 「ど、どうしたの」 また何かあったのかと思って私も慌てて靴を履く。 「落ち着いて聞いて、なまえ。 ――――セブがポッターに命を救われたって」 リリーの言葉に私は部屋を飛び出した。 リリーが私を呼ぶ声は聞こえなかった (また一難) [戻る] ×
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