fate. | ナノ





カルト君とはぐれたところに戻れば、だるそうにカルト君が立ってた。

死ねばよかったのに。このひとこと言われたときはキルアに会って舞い上がってた気持ちが急降下した。
……そんなひどいこと言わなくてもいいのに。



カルト君、キルアに似てるから余計に辛かった。





……仲良くなれないのかな。





今は飛行船に戻って使用人さんが出してくれた紅茶を飲む。





結局買えたのは折り紙だけだったなあ。
お金はあの人形で全部飛んでいったし。



髪留めを触れる。
まあ、これもらえたからいいか。
それにキルアから『ねえちゃん』って言ってもらえたし。
五万なんて安いもんだ。




にやけながら髪留めを早速使ってみる。
鏡で確認する。
うん、似合ってると思う。
自分で言うのもなんだけど。


本当に一生大事にしようっと。





今度は折り紙を一枚取り出す。



久しぶりに鶴でも折ろうかな。




今日のことを思い出しながら折っていると扉が開いた。
折る手を止めないで扉を見ると、カルト君が嫌そうに立っていた。




「どうしたの?」
「……今日のこと兄様に言ったら殺す」
「え?」




なんのこと?
しばらく考えてピンときた。
ああ、私を一人にしたことか。



「言わないから大丈夫だよ」




一応悪いとは思ってたんだ。
まあ、私に悪いんじゃなくてイルに悪いと思ったんだろうけど。



鶴の顔を折って、出来上がった。
それを机に置くとカルト君が見てた。



視線は私ではなく鶴に注がれてる。




「気になる?」
「……違う!」




少し頬を赤くして否定するカルト君。

……これはいけるかも!




「次箱作ってあげる!」
「別に頼んでない!」


無理にはおいでと言わずに、私が座ってるソファにカルト君自身から近づいて来るように仕向ける。
パドキアには折り紙なんて文化ないから多分初めて見るんだろう。

仲良くなれるかも!



にやける顔もそのままに箱を作っていく。
これは簡単だからすぐできる。




「ほいっ! できたよ」



出来上がった箱を机に置く。


次はキリン作ろうかな。
新しい折り紙を取り出して折り目をつけていく。
カルトくんをちらりと確認すると随分好奇心が刺激されてるようだ。
やっぱりまだ子供だね!




「なに作ってるんだ……」
「なんだと思う?」



多分私はものすごく悪い顔してるんだろう。
ニヤケを抑えるのに必死だ。
こっちに来て確かめてみたらどう? と表情で訴えてみるとカルト君は本当に悔しそうな表情で、けどものすごく興味津々な表情で近寄ってきた。





「……脚?」
「そうそう、今作ってるものはね二枚折り紙使うから、まずは脚の部分から」



一つ目のパーツである脚の部分ができて、次は二つ目の首の部分を作る。
カルト君もいつの間にか私の隣に座っていて、手元に集中してる。




どんどん織り進めていく。






「……キリンだ!」



途中でカルト君が嬉しそうに声を上げた。




「正解! よくわかったねー!」
「首が長いからすぐわかった! ……はっ」




可愛らしい笑顔で私にそう答えた後、しまったというような顔をした。
私にこの笑顔を見せる気はなかったんだろう。
けど無意識に見せてしまったことを後悔をしてるんだろう。


……やったね。


カルト君のこの表情を引き出せたことに今すぐガッツポーズしたい。

とっても可愛い年相応の笑顔だったよ。




にやけそうな顔を必死で押さえ込んで首と胴体をくっつけてキリンになった折り紙を鶴の横に並べる。



「カルト君も作ってみる?」
「え」
「はい! 一緒に作ろ!」




戸惑ってるカルトくんの返事を待たずに一枚の折り紙を渡した。




「まずは三角におります」




まだ落ち着いてないカルト君を無視して始める。
考える暇を与えない。
考えたら断るかもしれないし。


「そして、その三角をこういう風にペコッております」
「ま、まて! まだ出来てない!」



カルト君も急いで折りはじめる。
やったね!


教えながら折っていく。
あ、私何も考えずに鶴折ろうとしてるけど、初心者にはちょっと厳しいかな。
初めて折り紙に触れたのに鶴は難しいよね。
ま、大丈夫か。




「ここを、こうして」
「こ、こう?」
「あー違う違う! こうするの」
「ああ、そうか!」




教えていくうちにカルトくんも私に対して柔らかい態度になっていく。
ああもう! やっぱり小さい子に好かれるのは気分がいい!




あと頭を折り曲げるところまできた。



「頭を折って、羽を広げて……出来上がり!」
「……ボクの綺麗じゃない」


私のと比べてまだ下手なカルトくんは落ち込んでる。


「初めてにしてはすごくうまいよ!」



初めて折り紙おって鶴作れる人なんてそうそういないよ! と加えて言うと少しは機嫌を直してくれたみたいだ。


「もう一回折る!」


負けず嫌いなのか、もう一度挑戦しだしたカルト君。
一回折ってみて織り方を覚えたのか、私のお手本なしに丁寧に進めていく。


すごいカルト君。
めちゃめちゃ覚えがいいね。



感心してカルトくんの手元に注目する。




あ、一番難しいところもすんなり折れてる。
さすがゾルディックだね。
一回見たら全部覚えられるのか。




眺めていると、部屋のドアが開いた。




「何してるの?」
「イル! おかえり!」




振り返るとイルが部屋の中に入ってきた。
私とカルトくんが同じソファに座ってるのに驚いたのかほんの少し目を見開いた気がした。
そりゃ朝の様子から比べると驚くよね。




「カルと一緒にいるとか珍しいね」
「折り紙してたんだ」
「折り紙?」



イルはよくわかっていないのか首を少し傾げた。




「できた!」




カルト君が嬉しそうな声を出して鶴を私に見せてきた。




「うわ! すごいよカルト君! めちゃめちゃ綺麗!」



私のよりも綺麗だ。
私も鶴折れるようになるのに昔は四苦八苦したのになあ。
たった二回で完璧に折れるようになるなんて。
この鶴の嘴なんて触ると刺さりそうだよ。



「こんなの簡単だよ」



すました顔じゃなくて、本当に嬉しそうな顔をしてそう言うからきゅんとした。
可愛いよ、カルト君。
抱きしめたい衝動を抑える。




「何作ったの?」




イルもカルトくんの嬉しそうな声が気になったのか、私たちの座るソファに寄ってくる。




「兄様! これボクが作ったんです!」



カルト君が差し出した鶴をイルが手にとって眺める。




「これ紙で出来てるんだよね」
「はい!」
「へえ、すごいね」



イルが感心するとカルトくんは私に見せた笑顔よりも可愛らしい笑顔を見せた。
やっぱり私よりもいるに褒められるほうが嬉しいのか。
いつかこの笑顔を私に見せてくれる日がきたらいいのに。
もっと仲良くなれるようにしないと!





「おい! 次はキリン教えろ!」




私にキラキラと輝いた純粋な目を見せてきた。




いつか『おい』じゃなくて名前かお姉ちゃんって呼んで欲しいな。




「いいよ」



……話せるようになっただけまだマシか。
これから頑張ろう!





「……オレ、風呂行ってくるね」
「はーい」
「わかりました兄様」


私もカルト君も振り向かずにイルの言葉に答えた。




「…………、」



(折り紙とイルミ)
[ 33/45 ]
[*←] [→#]
[戻る]
×