前までキルアと交わしていた手紙はもうなくなった。 まあ、キルアは旅に出てるし元々筆不精なんだから手紙が送られてくることなんてまずないだろう。 たとえ送られてきても一ヶ所に留まっていないキルアに私から返事の手紙を送ることはできない。 だから手紙はキルアが家出してからぴたりとなくなった。 ちょっぴり寂しい気持ちも新しい手紙の交換相手ができたことで解消された。 「はい」 「ありがと!」 居間で休憩時間を過ごしていると、イルが手紙を持ってきてくれた。 受け取って中身を見る。 ――――――――――――― なまえへ もう820個もできたぞ 千羽までもう少しだ! できたら写真を撮って見せてあげるから! あと、この前言ってた羽が繋がった鶴、作れたぞ! キレイにできたからお前にあげる おじい様に僕の作ったキリンを見せたら大切にするって言って部屋に飾ってくれたんだ! お父様やお母様に贈ったら喜んでくれるかな。 もっと何か折れるようになりたい! カルトより ――――――――――――― 読んでて思わずにやける。 なんて可愛いんだ。 キルアとは違う可愛さにもうおねえちゃんはメロメロだよ。 封筒を覗くと中には手紙にも書かれていた羽が繋がった2羽の鶴が入っていた。 これ結構高度なのに。 ジャポン人でも折れる人少ないのにすごいよ。 カルトくんは本当に器用だなあ。 私も部屋に飾っておこう。 「嬉しそうだね」 「そりゃ、あんなに敵視されてた子にこんなに懐いてもらえるようになったんだからね」 「そういや、カルはなまえのこと嫌いだったよね」 「そうだったね」 私を殺そうとしたり、死ねばいいのにって言ってた子が懐いてくれるようになって、本当に嬉しくて泣けてくるよ。 これでお姉ちゃんって呼んでくれたら最高なのになあ。 もっと貢いだら呼んでくれるようになるんだろうか。 そのためだったらなんでも貢がせてもらうよ。 「あ、そうだ」 この前ジャポンにいるおじいちゃんに頼んだもの届いたんだ。 戸棚を開けて目的の物を取り出してイルに差し出す。 「これ、カルト君に渡しておいて」 「折り紙?」 「うん、これは千代紙っていってね和紙で作られてるんだ。模様もついててきれいでしょ」 「うん、きれい」 カルト君も喜んでくれるかな。 今絶賛折り紙ブーム到来中のカルト君なら喜んでくれそう。 返事の手紙にも渡しておいたこと書いておかなきゃ。 便箋を取り出して書いていく。 最近私の周りで起きたことや折り紙のことを書いていく。 「手紙のやり取りそんなに楽しい?」 イルがカルトくんの作った鶴の嘴をつつく。 「うん。手紙だと実際に会う時より素直になれるしね」 「そうなの?」 カルト君がいい例だね。 多分会ってだともう少しそっけなくなってるはず。 手紙だからこそこんな風に接してくれてるんだと思う。 手紙万歳だね。 「貰うと嬉しいの」 「そりゃ嬉しいよ」 「……そっか」 イルが何か一人で納得したみたいだ。 (素直になりたくて) [戻る] ×
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