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ミンミンゼミが本格的に鳴き始めたころだった。夏といえばバーベキューもいいよね、という話題になって「実はやったことがないんです」とギルくんは言う。
「そうなの?」
ナマエは意外だなと驚いた。せっかくだから皆でやってあげたいと思う。ふと思いついた場所があった。
「うちの庭は広いからBBQをしてもいいと言ったが……まさかお前まで来るとはな」
「保護者の監督責任だ」
衛宮切嗣邸の庭でありえないメンツのバーベキューが開催されていた。家主である切嗣、士郎、ナマエに誘われた凛、そしてギルガメッシュ(子ギル)。さらには保護者?として言峰綺礼、バイトで食材の宅配に来たウェイバーと、聖杯戦争にいわくがありすぎるメンツが揃っていた。
「お前は来なくていいだろう」
「いいのか? せっかく秘蔵の酒を持ってきたというのに」
酒のラベルを見て、切嗣はムッと顔をしかめる。酒に罪はないぞ、と差し出されたグラスにふと視線をかんじた。
「……ギルガメッシュ」
「たしかにバーベキューというのはお酒が進みそうですね」
「今日はその姿で過ごす約束だが?」
「嫌だなあ。ぼくだって、ちゃんと皆で過ごすときはわきまえてますよ」
にこやかに笑うが心配になる。そこへ「肉が焼けましたよ、皆さんどうぞ!」とあかるいナマエの声が響いた。
「はーい!」
子どもたちの声がけむりに混じり、夏空へのぼる。肉の香ばしい旨み、冷たい飲み物の組み合わせが空腹を満たしていく。
楽しそうに過ごすナマエと子どもたちを見て、やれやれと切嗣は首を振った。こんなときに口喧嘩して雰囲気をぶち壊すのは野暮だ。
「せっかくなら楽しんでいけ」
と切嗣は酒のグラスを、宿敵であった綺礼とともに傾けた。
<おわり>
ちなみにウェイバーはナマエと一緒にお肉を焼いてくれます。