■ ■ ■
「チョコレート?」
いつも微動だにしない声が少しだけうわずった気がした。
「それで、君は、荘厳な空気ただよう教会に、本体の意味からかけ離れた、チョコレートを贈るという浮かれきったイベントを持ち込もうとしているのだね?」
絶対にするなと言われているのと一緒だった。ごめん、なんでもないから! と謝りながら背中に隠していたものをぎゅっと握る。
でも彼に渡したくて用意したから、『最近ではお世話になっている人に感謝する≠ニいう意味で贈るんだよ』と言い訳を添えて、義理にしてはやや重すぎる可愛いラッピングの包みを差し出した。
「……義理なのか」
頭上から降ってきた声に驚いて顔を上げると、もう彼はいなかった。
<おわり>