■ ■ ■


 =6粒目 クー・フーリン=

「バレンタインだあ?」
 商売のにおいがぷんぷんするというように、彼は顔をしかめた。
「そんなあからさまな反応しないでよ」
 それだけ彼が現世に馴染んでしまったということだろうか。せちがらい時の流れは胸にくるものがあった。
「どうせ1日経ったら半額で売られちまうものだろ。そんなもの必死にもらいたがる奴の気が知れねえな」
「………」
 そんなことを言っていたので、もし渡したらどんな表情をするかと思い、スーパーで売っていた1個100円の安っぽいチョコを渡したのだ。

「お、おう」
 彼はやけにすなおな表情でチョコを受けとった。それっきり、何も言ってこない。
「………?」

 面白くない。――室内にながれる神妙な雰囲気。まるで、私が彼に好意をこめてチョコを贈ったみたいじゃないか。

 商店街の気の抜けた音楽が聞こえてくる。彼は私に背を向けた。いつもと雰囲気が違うせいか、斜め後ろから見た彼は少しカッコ良かった。


6粒目


 後日、彼からお誘いがありました。

写真



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