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=5粒目 パッションリップ=
今日は私にとって特別だ。1年に一度だけ、好きな人にチョコを贈って堂々と気持ちを伝えられる日。深呼吸して、駆け出しそうな心臓の音を抑えて。
「…どうぞ、貰ってください……」
――望みはうすく絶望は深い。
世界の危機に私の想いなんて、みじんの価値もない。でも、叶わないからと逃げてしまうのはダメな気がして。私はあなたに気持ちを伝えるチャンスを逃してはいけないと思うのです。
自分の手では潰してしまいそうな小さな箱に想いを込める。
「ありがとう、リップ!」
マスターは笑ってくれた。
私は世界の滅亡よりあなたを失ってしまう方がよっぽど怖い。あなたの笑顔を見られるならば、恥ずかしさと恐れによって、この心臓が破れてもいいのです。
5粒目
後日、マスターにお手紙が届きました。