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=10粒目 ベティヴィエール=
名だたる英霊、仲の良い英霊はいるけれど、本命を渡す相手は彼にしようと決めていた。チョコを渡したら驚かれてしまうだろうか。
「――レイシフト先の戦闘で私はお役に立てませんから。カルデアにいるときは何なりと申し付けてください」
…ありがとうベティ。貴方のそういう所が、アーサー王があなたに最期を託した理由だと思うよ。
彼の温かさはわたしの支えだった。特異点から帰ってきたら、いちばん早く会いに行きたい。バレンタインで私の気持ちを伝えたかった。
「………」
だが当日、どこを探しても会えなかった。よく行く図書館、食堂の一角――…たくさん歩きまわって、最後にのぞいた修練場にベティはいた。私が近づいてきたのに気付いて、お辞儀をする。
「こんな日ですから修練場は空いているかと思って」
めずらしいね、というと彼は穏やかに言った。「最近はカルデア内でも緊急事態がおこります。そんなときに貴方を守れなければ、騎士の名が泣きますから」
「………」
その言葉に居ても立っても居られなくてチョコを出す。はい、と銀の腕に押し付けた。「私からベティに。言っておくけど、それ、本命だから」
もっと可愛く言いたかった。でも、今の貴方もじゅうぶん私を支えてくれていると伝えたくて。感情が先走った。
ベティは驚いた表情をしたけれど、やがて大切そうにチョコの包みを受け取った。
「先ほど貴方を守るためと言いましたが…」
彼は恥ずかしそうに微笑んだ。
「本当は、貴方が他の英霊にチョコを渡している姿を見たくなかっただけかもしれません。
…マスター。こんな我欲を持った私でも側にいることを許してくれますか?」
うん、もちろんだよ。
笑って頷くと、彼はチョコを差し出している私の手に触れた。
10粒目
後日、マスターにお手紙が届きました。