■ ■ ■
=9粒目 モードレッド=
叛逆の騎士とは聞いていたけれど、彼女はちっとも私の指示に従ってくれなかった。ランスロットやガウェインと話していると「ハ、どうせ従順な騎士ごっこしているヤツとしか合わないんだろうさ」と文句ばかり言ってくる。
そろそろ私も小言をいわれるのが嫌になってきた。
「――わかったよ、モードレッド」
指示に反抗した彼女をすんなりと受け流した。「貴方の言うとおりだね。お互い嫌な思いをしたくないだろうし、他の人にもお願いするよ」
「っ……!」
その日の夜、シュミレーターから部屋に戻るとテーブルに小さな包みがあった。包みからは上品なバラの香りがした。
――こんな贈り物をしてくれるのは誰だろう?
次の日、食堂でそれっぽく思った人に声をかけてみた。「ねえガウェイン。昨日、私の部屋に包みを置いていった?」
「いいえ、マスター。私なら昨日――…」
ガンッ。
後ろでにぶい音がして、壁にうちつけられた拳と打った人物を、交互に見る。
「な、に……モードレッド?」
「うっせえよ。騎士道ごっこなら他所でやれ」
どすどすと肩を怒らせて彼女は去っていく。…なんだろう。でも贈り主をホワイトデーまでに見つけなきゃ。
私と彼女の距離はまだ一万歩ぐらいあった。
9粒目
結局贈り主は見つからなかった……テーブルに置いておいたお礼の手紙はなくなっていたけれど。
ちょっぴりごんぎつねみたいなモーさん。