観葉植物な話




○月5日
こんなご時世なので外に遊びに行く気になれず、観葉植物を育てることにした。
通販サイトで『観葉植物をそだてよう〜何が咲くかはお楽しみ!〜』という栽培キットを買い、3日で到着した。
せっかくだから観察日記を書くつもり。小学生ぶりだ。

○月6日
説明書の通り、水をあげたら翌朝に土がこんもりしていた。
まだ何が出てくるかわからないなー。

○月8日
なんか緑色のかたまりが土から出ていた。グミみたいなかんじで、こんな芽ははじめて見る。
ググっても似た植物がない。すごくめずらしいのかな……?

○月9日
変化なし。ちょっと飽きてきて、友達から勧めてもらったドラマを観る。柔軟体操もした。
植物には変化がないけど、部屋のどこからか視線をかんじる。気にし過ぎかな?

○月10日
体操しているときにちらっと植物をみたら、ぶるって震えた気がした。
えっ…見間違いかな? なんか怖いんだけど。
見た目も変だし、ちょっと気持ち悪いから……捨てちゃおうかな…?

○月11日
ちょっ…ヤバい!信じられないことが起きたんだけど!!
これは警察にでも電話し




「てえっええええ!」

朝目を覚ましたら、信じられないことがあった。あの観葉植物の鉢に、ちっちゃな小人が座っていたのだ。サイズは10センチぐらい。
しかも目をあけて、こっちを見ている。私が飛び上がってベットの上で後ずさりしたら、その小人も後ろにあとずさった。どうしよう。
おろおろして、テーブルの上のスマフォを取ろうとしたら、その小人も手を前にのばして取る動作をする。
……もしかして、真似してる?
しばらく観察してから、おそるおそる近づいた。小人は私を見上る。すごく澄んだキレイな目だ。目鼻立ちもキレイで、すごい美人だった。触ろうとして手を伸ばすと、同じ動作でわたしに手をのばしてきた。
不覚にも、かわいい…!
ちょこんとさわると、ひんやりしていた。くすぐったかったのか、ぷるぷる顔をふる。
ひええ、なんだこの可愛い生き物は。

「あなた、名前はなんていうの?」
「……?」

小人さんは答えない。それはそうか。
でも、何をあげたらいいんだろう。お水? 植物に水をやる感じで、じょうろでかけてあげたら、可哀想にびしょびしょになって震えだした。タオルを取りに行く前に、ひとまず窓のさんに置いてあげたら、太陽の光を浴びて嬉しそうに笑った。
えっ、喜んでるのかな? ぜんぜん分からないけど、タオルを持ってきて横に置いてあげる。私は朝ごはんを食べることにした。その様子を、小人さんはじっと見ている。好奇心旺盛なのかな。よくみると、同じように手をうごかしたりしていて、なんだか子供みたい。
楽しく観察しているうちに1日が過ぎた。


――次の日の朝。
なんだか胸の上が重くて、うっすらと目を開けると、小人さんと目があった。
「〜〜!!???」
ガバっと起き上がると、小人さん……いや、ちょっと大きくなって3歳児ぐらいになってたんだけど……は足元のほうへ転がり、ベット枠にぶつかった。痛そうに頭に手をやっている。
「えっ…ご、ごめん…!?」
すると小人さんはキレイな水色の目を細めながら、こう言った。「…まったくだよ。せっかく起こしてあげたのに、酷いな」

凛とした、すずやかな声だった。
いや、そういう話をしている場合じゃない。まずなんで喋っているのか。ベットの上にいるのか……目を白黒させている私に、小人さんはまた言う。

「ぼくの名前はエルキドゥ。君がぼくの目を覚まさせてくれたんだね。名前は?」
「えっと…立香…です」
頭は追いつかなかったが、名前を聞かれて反射的にこたえた。エルキドゥ、と名乗った3歳児は「ふーん」と言って、手を差し出す。
「じゃ、立香よろしくね。しばらくお世話になるから」
「それは礼儀正しくどうも……って、ええっ!?」

観葉植物が小人になり、歩いて話しはじめた。そんな話はニュースで聞いたことがない。
頭の処理がおいつかない私を、エルキドゥは不思議そうにみつめかえした。
「どうしたの?君がぼくの目を覚ましたんでしょ? 用事があったんじゃないの?」
「え、えっと……べつに、その…」

話が伝わるか分からなかったが、通販サイトで観葉植物の栽培キットを買って育てたことを説明した。エルキドゥは難しそうな顔をする。
「…それって変だな。ふつう、そんな手段でぼくを喚び出すことなんて出来ないけど。」
「よくわからないけど……やっぱり変だよね」
「うん。ぼくは神の泥でできた人形だ。あの鉢に入っていた土が、その泥だよ。普通に手に入るシロモノじゃない」
「うーん…?」
神の泥? よくわからない話をエルキドゥはする。でも自分には害を与えないみたいで、ホッとした。ひとまず彼をここに置いてあげようと思った。しばらくの間だけど。

「じゃあ……エルキドゥ、くん?ちゃん? よく分からないけどよろしくね」
「君のそういう素直なところはいいね。うん、お世話になるよ」

――なんかこの子毒舌ではないか?
そんな思いがよぎったが、かれはテレビを指差して「あの黒い箱、観てて面白かったからつけてくれる?」と言う。始まった子供番組に、はやくも集中して見入っている彼を横目に、私は朝ご飯の支度をはじめた。

期待していたのとは全く違うけれど。
これまでとは違う、退屈しない毎日になりそうだ。




<おわり?>

ちなみにドゥちゃんが観ているのはシャ○ーン!か、お○スタだと思う。

〜ネタばらし〜
近くにギルガメッシュが住んでいて(謎設定)、宅配する人が取り違えてしまった。だから王様は観葉植物をがんばって育てている。
「エルキドゥ、そろそろでてきてもいいのではないか?」
……毎日はなしかけてる。気の毒。

ドゥちゃんは三歳児ぐらいの見た目(泥の量が足りなくて)なので、かわいいお洋服を着せてみる。ある日、TVで見た夢の国に行きたいってだだこねられて、お出かけする。
でも王様にみつかって拉致られる。かえってきたら巨大化(標準サイズ)にもどってて、でも性別ないもんなーと主人公の部屋に暮らし続ける。

エルキドゥ「……(言ってないけど性別も設定自由だよ)」
おろおろする主人公と、あざといドゥちゃんの話も書いてみたいな!





/

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -