冬の日の思い出



めずらしく雪が止んだ。
久しぶりに見えた空は鉛色で、青空が見たいなと思った。

「…日本にいたときは、雪が降るとわくわくしたのにな」

このまえ並んで外の景色を見たとき、彼にも言ったのだ。すると彼は、「君は子供みたいに笑うんだな」と返した。
「エミヤは無いの?雪の日の思い出」
「ああ…あるよ。不思議だな、そう言われると子供時代の思い出がたくさんよみがってくる」

おだやかな横顔に、彼にも思い出したくなるような、幸せな子供時代があったのだと思った。
エミヤはどんな子供だったのだろう。例えば家族とどんなふうに過ごしたんだろう。

「クリスマスは?ケーキ食べる派の家だった?」
「ああ、立派なやつじゃなかったが。人数分キレイに切れるか皆で見守ったな。プレゼント交換はしなかったが、ちょっとだけ豪華な食事を作ったかな」
「ふうん」
私はね、と言葉を紡ぐ。オチもなく淡々と、でも少しだけ胸が弾む会話だった。冬の日。こたつの話や、よく食べた鍋の種類、好きなアイスの話など。
その話がおわるころには、もっと昔からエミヤと知り合いだったような気がしていた。

「子供の頃以外で…最近の思い出ってないの?」
「ああ、思い出と言うより記憶かな。あっさりとしている」
私は彼の現在の顔を見つめ、にこりと笑った。
「じゃあさ、こんど雪が降ったら私の部屋にきてよ」
「雪を見に行くんじゃなく、か?」
「それでもいいよ」

彼が来たときのためボードゲームでも用意しようか。二人では気持ち悪くなるぐらい大きなバケツプリンもいい。新しいマフラーを巻いて外に行ってもいいし。
私は彼となら何でもわくわくするのだ。彼にもそんな思い出をあげたかった。

「約束だよ」

この約束が思い出になるように。
私が記憶にならないように。

あなたが英霊、私が人間であっても。

*****


この主人公はエミヤにまいってます(恋愛的な意味で)。でも、できるだけ長く一緒にいたいし彼を困らせたくないから「好き」とは言わないかな。
ちなみにこの主人公の部屋にギルはいませんよ。
ギルが居たら…。

「ほおう、偽物はいつ見てもふぬけ面だな」
「(無視。主人公にたいして)…よかったら、俺の部屋にこないか。数日分の着替えを持って」
「待て!王の面前で堂々と狼藉を働くか!」
バトル勃発。
でも(一応、主人公の部屋なのでギルも遠慮して)、コタツを挟んでみかんを投げ合うバトルが頭に浮かびます笑。
王様は足が長いので、それも喧嘩が起こりそう笑。




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