偽りのカレンデュラ 



「やめてよ」

 右の腕で瞼を拭う。

「そんな台詞」

 ナオから目をそらした。

「恥ずかしい」





月 乃
Section 4
死 神シニガミ





 10メートル、前方に停まるハイエースの運転席から、内装業者と思しい中年男性が奇異の目でこちらを見てた。

「ケータイ小説じゃあるまいし」

 背後に連なるすべての店の軒下からも、きっと訝りの視線が向けられているはず。

 そりゃそうだ。

 恋愛関係にあると思われる夏休み間際の高校生が、映画のクライマックスを髣髴とする台詞を叫んで、あまつさえ涙を流すのだから。なにが起きてもおかしくない東京とはいえ、奇異の目をつくらせるには充分すぎる光景。

「べつにいいじゃん」

 恥ずかしいことだと思いこんでみる。

「投げやりになることがあったって」

 あえて明るいトーンを演じてみる。

 そして1歩、逃げだそうとした時、

「なんだよそれ」

 頭上のナオがつぶやいた。

 まだ歪んだ声で、

「だったら、あてつけるようにいうなよ」

 今までにない籠った声で、

「胸にとどめとけよ」

 拗ねた声で、

「俺に、いうなよ」

 怒った声で、

「伝えんなよ」

 やっぱり、途方に暮れた声で、

「俺に期待してないんなら投げやりなこと言葉にすんなよ!!」

「うるさいッ!!」

 なのに、あたしは怒号で遮った。

“秘めるが花”の人、ナオ。

「混ぜてほしいんでしょ!?」

 なのに、いったいあたしは、なにを反論して叫んでいるんだろう。

「投げやりなことを言葉にするのもあたしじゃん!!」

 不貞腐れたような、それとも、威張ったような喉で、なにを叫んでるんだろう。

「コレもあたしじゃん!!」

 秘められないほど追いつめさせといて、なに帳尻あわせのようなことを叫んでるんだろう。

「あたしの、人生じゃん!!」

 なにを都合よく泣いてるんだろう。

「混ざって、みろよ……!」

 怖くてナオを直視できないくせに、すぐスタミナ切れで叫べなくなるくせに、弱いくせに、なにを勝手に胸をつまらせてるんだろう。

 助けてほしいくせに。

 助けてほしい。

 助けてよ。

 叫びたい。

 助けてもらえるものならば、助けられる類いのものならば、助けてと叫びたい。

 その胸にすがりつきたい。

 触れたい。

 ナオに触れたい。触れたい。触れたい。触れたい。触れたい。触れたい。触れてもいい? 触れたい。触れたい。触れたい。触れたくない。触れたい。触れたい。

 この瞬間にも、芽生える命がある。

 そのためにあたしは、淘汰される。

 あの日の、潰された仔猫のように。

「……すけ……て」

 声にならない声を絞りだし、わなわなと全身を震わせながら、期待以外にはなにも望むことのできない恋人を、見あげた。



 黒い少女が立っていた。



 ナオの背後、緩やかな勾配の階段、その頂上に、ゴワついた漆黒の髪の毛・光沢のある漆黒のワンピース・発光しているかのように蒼白い皮膚を持つ少女が、小さく、小さく、仁王立ちでたたずんでいた。

 顔のない少女。

 喪服の少女。

 陽炎の少女。

 おばあちゃんの葬儀にあらわれた少女。

「は……ぁ……!」

 胸もとに刻まれた繊維の皺のテカりは、さながら月。



『舞彩さんもすぐいくわ』



「イヤぁ!!」

 腰が抜けた。尻餅をついた。

 20メートルの距離感、その、フィギュア人形ぐらいの小ささが浮きだして見えて、安物の3Dみたいで、違和感のコラージュみたいで、なのに迫ってきそうで、咄嗟に背中を向けると、四つん這いになって逃げだした。でも自分の身体じゃないようで、コントロールがきかず、両手がもつれて、顔から路面に突っこむ。

「いぃ……ひぃぃぃ……!」

 顔面の痛みよりも恐怖が勝って、道路の中央で丸くなる。頭を抱えて亀になる。

「来ないで、来ないでぇぇぇ!!」

 死神だ。

 彼女は、死神だ。

「舞彩!?」

 ナオの声。

 どこから聞こえるのかもわからない。

「どうした、舞彩!?」

 右も左も、上も下もわからない。

 熱いような冷たいような、しかっとするアスファルトの温度しかわからない。

「おい。なんだ。どうした?」

 耳慣れない、くぐもった中年男性の声も近づいてきた。だけど、それ以外の雑音は聞こえない。個の音を残し、それ以外の、まぎれこむ音はすべて雲散していた。

 すると、

「舞彩!?」

 ナオの呼びかけと同時だった。ひたり。背中に、持ち主の特定できない掌の感触。



 ご ぢ ょ ご ぢ ょ



 刹那、新宿のカフェの軒先、月乃さんに触れられた瞬間の記憶が眉間に蘇る。あの時、あたしは泣きながら必死に釈明した。

 そういえば月乃さんから電話がきてたんだっけ……不思議なことに、一瞬のうちにそんなことを思った。でも、それもすぐにかき消され、

「うがぐ!」

 狂犬の唸り声をあげて、あたしは掌から這って逃げた。喪服の少女に対する恐怖と体温に対する畏怖、2つのストレスが頭に渦巻き、混濁し、ワケもわからずに、ただ無我夢中になって這った。

 来る……少女が来る。

 来る……体温が来る。

 だけどすぐ、背中に、あまりに巨大で、柔らかな塊が伸しかかってきて、あたしの逃亡はいとも簡単に阻止された。

 抱き止められた……とは、すぐには思えなかった。ただ、ゴム製の、重く、巨大なシートが覆い被さってきたようにしか。

「舞彩。どうしたんだよ舞彩!?」

 すぐ耳もとに、ナオの必死な呼びかけ。

 ナオに、背中から、抱きしめられてる。



 



 ホントにナオ?

 喪服の少女、とか?

 ホントにナオ?

 わかんない。

 あたし、よく知らない。

 ナオの体温、知らない。

 わかんない。

 ホントに、ナオ?

 ホントに、体温?

 わかんない。

 これ、体温?

 この、あったかいの。

 この、どんどん熱くなってくの。



 



 熱い。

 熔けそう。

 熱い。

 融けそう。

 熱い。

 解けそう。

 怖い。

 壊れそう。



 



 隠さなきゃ。

 あたしを。

 早く。

 隠さなきゃ。

「だいじょうぶ」

 自分でも驚くほどの軽い口調で、

「大丈夫だよ」

 早口で、

「ぜんぜん大丈夫。なんともないから」

 温度のゴムシートを強引に剥ぎながら、

「ホント。べつに。気にしなくていい」

 微笑みすらも浮かべながら、

「平気だからぜんぜん平気だから」

 でも、視界に映るものはなにもなくて、

「なんにも見てないからなんにも」

 誰に喋ってるのかもわからなくて、

「べつに、怖くないから」

 剥ぎきれずに、だから引きずりながら、あたしは立ちあがった。

 怖くない。

 怖くない。

 怖くない。

『知らないから怖いの。幽霊さんもそう。幽霊さんがどんな人生を歩いてきたのか、ちゃんと知れば絶対に怖くない』

 おばあちゃんの言葉。

『もしも舞彩ちゃんが怖いなぁって思った時には、怖がらせたものを、知ろうと思うことが大切よ?』

 テレビの心霊特番。恐怖のあまりに号泣するあたしを、そういって慰めてくれた。

『人にも、動物にも、物にも』

 背中から体温を羽織らせながら。

『ちゃんと人生があるんだからね?』



『舞彩さんもすぐいくわ』



「きゃあッ!!」

 再び、耳もとに少女の声が聞こえた気がした。思い出が寸断されたあたしは、短い金切り声をあげて、飛び跳ねて、

「舞彩!?」

 しがみつく体温に、跳ねきれなくて、

「んがぁ!!」

 体温が、体温が、

「だい、じょう、ぶ、だ、から……!」

 懸命に言い逃れして、

「大丈夫じゃねぇよ!!」

 視界はゼロで、黒くて、

「どうしたんだよ!? 舞彩!?」

 喪服みたいで、

「イヤッ!! 来ないで!!」

 膝に痛みが走って、

「来ないでぇ!!」

 また路面に倒れこんだみたいで、

「コレ、救急車じゃねぇか?」

 中年男のつぶやきが、

「舞彩!? 舞彩!?」

 ていうか、怖い。怖い。怖い。

『ちゃんと知れば絶対に怖くない』

 ……ムリだよ、おばあちゃん。

 と、その時だった。

 ぴ り り り り

 すぐ身近から、携帯電話の鳴る音。

 途端、視界が正常に戻る。

 ヒビ割れたように見えるアスファルト。3箇所、除去しきれなかったガムの染みが黒く浮かんでいるのも見える。あとは碧い落ち葉がいくつかと、アスファルトに練りこまれる、きらきらとした明滅。

 膝をついて崩れていた。痛みは、ない。感じない。

 ぴ り り り り

 胸もとから聞こえる気がする。習慣的に左のポケットに触れる。腕がある。右腕か左腕かはわからない。誰の腕だろう。背後からまわされた腕。かつて、こんな近くに腕があったことなんてあったっけ?

 ぴ り り り り

 あ、そうだ。電話だ。電話に出なきゃ。だから、腕を押しのけた。力瘤のあたりに黒子が見えた。胡麻みたいな小さな黒子。そして、わずかにできた隙間からポーチを取りだす。さらに携帯電話も。

 ぴ り り り り

 やっぱり。鳴っていたのはあたしの携帯電話。お尻も赤く明滅してる。それから、ディスプレイを確認。背後のすぐ耳もとに「舞彩?」という怪訝なナオの声。でも、気にせず確認。

【月乃さん】

 発信者は月乃さんだった。ああ、昨日もかけてきてくれたんだっけ。本当は、まずあたしのほうからかけていなきゃいけないのに、不躾なあたしにかまわず、こうしてかけてきてくれた。それとも、電話番号を交換したのにも関わらず、なかなかかけてこないあたしにヤキモキしてかけてきたのかな。だったら、ちゃんと出ないとマズいよな。嫌われちゃうよな。

 ぴ り

 う・うん……軽く喉を整えてから、

「もしもし」

 背筋を正して明るい声で出た。実際は、明るく繕ったような、着地点の定まらない腑甲斐ない声だった。

「もしも」

「もしも、し?」

 挨拶が搗ちあう。と同時に、びッ、車のクラクション。見ると、白いワンボックスカーが目の前に立ち往生。ああ、あたし、車道にいるんだ。慌てて立ちあがる。でも背中に変な負荷。ふりかえるとナオの顔。なにしてんの? 車、車……と諭しつつ、ナオと白線の内側にまで後退り。そばではニッカボッカの中年男が難しそうに笑んであたしを見てた。なに見てんだよ。

「ごめんなさい。もしもし?」

 改めて早口の対応。すると、

「聞こえますか?」

 芯のある女性の声。

 月乃さん?

「はい。聞こえます大丈夫です」

「雨音さん、ですよね?」

「あ、と、はい、そうです」

「雨音」からはずいぶん離れていたので、わずか逡巡して答える。次いで、思いがけない台詞が鼓膜を撫でた。

「私、ミソノです」

「ミ、ソノ、さん」

「雨宿りの件でお世話になりました」

「あまや……ああ、ミ、美園さん?」

 でも、ディスプレイには【月乃さん】とあったような……?

「あれ? 美園さ、あれ? 月乃、さん、この、電話、番号、は?」

 しどろもどろになりながらキーワードをバラ蒔くと、やはり芯のある、アルデンテみたいな声がかえってきた。

「はい。そうです。月乃の携帯電話から、かけております」

 でも、受話器越しにしては、あまりにもくぐもったトーン。

「ご無沙汰をいたしております。お電話をさしあげてもよろしかったでしょうか?」

 聞き慣れない、大人な、丁寧な挨拶。

 美園ママが、あたしに用事? だって、ママは敏腕ホステスで、あたしは、たぶん普通の高校生で、接点はきっと、ほとんどないはずで、月乃さんがいなければ絶対に関わらなかった人だし、これからも、月乃さんを介してでしか関わらないはずだし、それなのに、確かに月乃さんの携帯電話を借りてのことだろうけど、でも、肝心要の月乃さんを飛び越えて、いきなりママから電話をかけてくるなんて。

 いったいなんだろうと戸惑いながら、

「はい。だい、大丈夫です。ご無沙汰しております。今、ぜんぜん、大丈夫、です」

 自分でも呆然とするほど聞き慣れない、子供っぽい、散らかった挨拶。

 すると、わずかに間をあけ、美園ママはこういった。

「今、私、新宿にある東都医科大学病院という場所からかけているのですが、あの、恐れながら雨音さん、これから、こちらにお越しいただけませんか?」

 シンジュク?

 トウト・イカダイガク・ビョウイン?

 病院。

 おばあちゃんの病院。

 晩年の、ナオの病院。

 月乃さんの、息子さんの病院。

 それから、カナエのいる病院。

 病院。病院。病院。

 あたし自身も関わるんだろうか。

 直接、病院で眠るんだろうか。

 来年の、たぶん、頭のほうに。

 あーあ。病院か。

 人間、最初と最期は必ず病院。

 ヤだな、病院。

 陰気臭いもん。

 いかにも、死にました……みたいな。

 どうせ死ぬんなら、ここがいいな。

 代官山で、ナオと散歩中に。

 ぱたっと。

 散歩の流れで、ぱたっと。

 しかも、ふたりで同時に。

「これから、ですか?」

「……是非」

「ゼヒ?」



 り ん



 どこか、遠くから、風鈴の音。

「それは、どうして、ですか?」

 古風な響き。

 安物の風鈴じゃない。

「病院に、なに、が?」

 風は、感じない。

 ここには、吹いてない。

 凪いでる。



「月乃が死にました」



 泣いてる。

「……は?」

「東都、医科大学、病院、です」

 美園ママが、泣いてる。

「あの、え、は?」

「会ってあげて、ほしいんです」

 づっと鼻水を啜ると、息も絶え絶えに、

「月乃に、会いにきて、くださ」

 が ち ャ ご ッ

 硬い物が落ちたような、激しい衝突音が鼓膜を叩いた。すぐに受話器の遠くから、ママッ!? ママッ!?……数人の女性の呼びかける声が代わる代わるに聞こえる。

「もしもし!?」

 問いかけても、美園ママは応えない。

「もしもし!?」

 応えない。慌ただしい呼びかけの声と、先生、きてください!!……悲痛な叫びしか聞こえない。

「美園さん!?」

 負けじと、大きく呼びかけたと同時に、

「舞彩さん?」

 声が代わった。

 空気の混じる、オーボエのような声。

「あなたが舞彩さん?」

 たくましそうだけど、深刻なトーン。

「あたしは小池といいます。東都医科大学病院です。待ってます」

 一方的にそう告げて、電話はきれた。

 ……コイケ?

 誰だろう。誰だっけ。聞いたことのある苗字。そして声質。もちろん、小池なんて珍しい苗字ではないし、声も、ぼそぼそと籠って聞こえたし、でも身に憶えがある。

 で、なんだっけ?

 新宿?

 東都医科大学病院?

 オ越シイタダケマセンカ?

 待ッテマス?

 ……なぜ?

 なぜ、きてほしいといわれたんだっけ?



『ツキノガシニマシタ』



 ……どういう意味?

 月乃さんがシニマシタ?

 シニマシタ?

 耳から離してディスプレイを見る。通話時間、2分13秒。クリアキーを押して消去すると、車道を挟んだ向かい側の建物へと目を向けた。

 ミルク色のシャッターで固く閉ざされた小さな店舗。貼り紙がしてあり「まことに勝手ながら」の文字だけが読める。

 直後、その視界の左から右へと、颯爽とバイクが横切った。見れば、漆黒のライダスーツを身にまとった小柄な女が、真紅のボディに跨っている。それから30メートルほど直進、左へと緩くカーブして消えた。

 カーブの開始点には、灰色の雑居ビル。その1階はガレージで、闇をたたえながら口をぽっかりと開けている。



 黒い少女が立っていた。



 ガレージの闇のはし、さらに濃密な黒を身にまとって、少女が小さく立っていた。乾電池ほどの大きさなのに、暗闇なのに、目を凝らさなくても立っているとわかる。相変わらずの黒髪で顔面が覆われているというのに、あたしのほうをじっと注視しているともわかる。

 死神の、暗黒の存在感。

 死神の、不吉な存在感。

 死神の。

「ウソ」

 吐息でつぶやく。携帯電話を見る。でももう月乃さんを知らせる手がかりはなにも映っていない。

「嘘だ」

 新宿。

「そんなの」

 東都医科大学病院。

「月乃さん」

“おこしいただけませんか”

「月乃さんが」

“まってます”

「し」

“つきのがしにました”



 月乃さんが、死んだ?



 ガレージを見る。

 もう、少女の姿は消失していた。

 存在感の薄い、闇しかなかった。

「東都医科大学病院」

 呪文のようにつぶやくと、

「え?」

 耳もとにナオの声。

「東都医科大学病院」

 暗闇を見やりながら携帯電話をポーチに仕舞う。胸に巻きつく腕を強引にずらすとポケットにおさめる。

「東都・医科・大学・病院」

 新宿。ここは代官山。東横線で渋谷まで向かい、山手線で新宿に向かおうか。それとも、渋谷駅まで駆けていって、それから山手線で向かおうか。代官山駅への距離と東横線での待ち時間を考えたら、どちらの交通手段にもさしたる差はないと思う。

 タクシー? でも、お金が心配。滅多に乗らないから相場がわからなくて不安。

 電車で?

 駆けて?

 どっちが早い?

「ちょ。ナオ、どいて」

 羽交い締めを無理やり解く。あっさりと抵抗も解けて、途端に肉体が涼しくなる。でも涼んでいる間もなく踵をかえすと、

「舞彩!?」

 ふりかえりもせずに、今きた中途半端な階段を、身を投げだすように駆けあがる。

「あのおネエちゃん大丈夫か?」

 中年男のくぐもったツイートが背後から聞こえた。

 は?

 なにいってんの?

 大丈夫に決まってんじゃん。

 あたしはぜんぜん大丈夫。

 月乃さんのほうが心配。

 あの日、月乃さんと会って、自分だけが被害者のように思っていた自惚れが優しく砕かれ、味方ができた気がし、月乃さんの喜びがあたしの喜びに思え、感情をも共感できた気がし、それは、あたしの人生にはなかった前向きな“大事件”で、だから、配慮が芽生え、葛藤が芽生え、だから電話番号を交換し、でも、だからなかなか電話することができず、放置してしまい、月乃さんは、家に帰れば孤独なのに、世界一、愛する息子さんはこの世にはいないのに、それなのにあたしは“生前葬”だなんだと久闊にしてしまって……。

「月乃さん」

 嘘だといって。

「つきのさん」

 嘘でしょ?

「づぎのさん……!」

 死んだなんて、嘘なんでしょ?





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Nanase Nio




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