1分か、10分か、1時間か、長くもあり、短くもある捻れた時間を、しばらくを、深く深く泣いた。
クルミはじっとして黙っていた。彼女の前で泣いたことなんて、なかったのに。
「夢を持ったことを後悔しないで」
涙がひと段落し、恩人の透明な声。
「別れは別れで、夢は夢、それとこれはぜんぜん違うよ」
聞けば聞くほど、また涙が落ちる。
「夢は必ずしも叶うとはかぎらない。でも、夢を見なきゃ、見たことのない世界なんて見られないんだし、だから、新しい世界を命に取り入れて、人は成長していけるの。夢を持つって、強い人じゃないとできないことだと思うよ? だって、見たことのない世界を目指すんだもんね?」
夢について語るような人じゃない。そうさせてしまったことが少し恐くて、だから悲しくて、切なくて、嬉しかった。
「成長しようと志したほどの人間が、強い人間が、そのために別れるの? あたしはそうは思わない。弱いから別れるの。夢を持ったのとは違うところにあるお互いの弱い部分が、別れを決めたの」
あんたのほうがちょっとだけ強かったのかも──そう言って、クルミは微笑みの語尾を匂わせた。
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