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Category : Diary
Update : 2013/08/10[Sat]20:00



 休憩時に、ある建設作業員から聞いた話。

 事の真偽は定かではないけれど、なにしろ東日本各地のあらゆる建設現場や復興現場で活躍しているベテラン作業員のげん、恐らく与太話の類いではないと思う。

 そのおじいさん作業員が曰く、温泉街が廃れている最大の理由こそ「暴力団排除条例」なのだとか。

 昨今の、国民にとっての敵である暴力団を排除する動きのせいで、軒並み、地方の温泉街が荒廃傾向にあるらしい。

「コッチ系(人さし指で頬に傷つけるジェスチャーをしながら)のヤツらは金の巡りってモンをよく知っててよ、見ケ〆みかじめ料なんて理不尽なこともすっけど、結局のところ縄張りを栄えさせることにかけては一級の腕があるってわけよ」

 縄張りである温泉街へ、観光客を相手取って金を落とさせる仕組みを熟知しており、露店などで腕を存分に発揮していたのだと。

「法的には問題のない露店なんだけどよ、そこらへんの企業がヤるのとコッチの人がヤるのとではオマエ、儲けに天地の開きがあるってんだから笑っちまうよな」

 ところが、排除条例の波がやってきた。

「今、地方の温泉宿ぁどこも潰れてるよ。○○温泉とか△△温泉だとか、どこももう御釈迦おしゃかだな。ゴーストタウンだよ、ゴーストタウン」

 善であり正義であるはずの社会改革の波が、ひとつの街を壊滅状態にしているのだとか。

「皮肉だけど、それが現実ってモンよ」

 ホントかな──と私はいぶかったが、しかし、理屈オンリーで言えば説得力があった。

 むろん、暴力団を容認する気などさらさらないものの、

「福利厚生だのなんだのって綺麗ごと言う前に、やっぱ学びの姿勢だわな。ブラックあってこそのホワイトってのが日本の歴史でよ、ヤクザを利用してやるってぐらいのことをしねぇと、この国は簡単に滅んじまうぜ?」

 理屈の上では、わからないでもなかったのだ。





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Nanase Nio




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