パピコ
Vignette
𝐂𝐚𝐭𝐞𝐠𝐨𝐫𝐲 : 𝐃𝐢𝐚𝐫𝐲
𝐔𝐩𝐝𝐚𝐭𝐞 : 𝟐𝟎𝟏𝟐/𝟎𝟗/𝟎𝟓[𝐖𝐞𝐝]𝟐𝟑:𝟑𝟎
コンビニにて。
60代ぐらいの男女が、小学生であろう少年と一緒にアイスのコーナに陣取っていた。祖父母と孫であるらしい。
孫は、懸命にアイスを選んでいる。どうやら祖父母に買ってもらえるらしい、食い入るようなまなざしをフリーザボックスに注ぐ。
祖父は黙って孫を見ている。それが常態なのか、険しい顔で。
祖母は忙しなく孫を補佐している。あれがいいんじゃない、これがいいんじゃない──煮えきらない孫へとしきりにプレゼン。
「ほら。パピコよパピコ」
パピコを指さす祖母。
「えぇぇ……」
今いち納得のいかない孫。
「ほら。パピコは2つになるから。これで祖父ちゃんと半ぶんこよ?」
折半で孫の腑に落ちるのだろうかと訝る私。
「うーん……」
しばらくもがいていた孫だったが、
「じゃあ、あのコーヒーのほう……」
やや不貞腐れたトーンで、件のパピコのほうではない、コーヒー味のパピコを指さしてギリギリの妥協点を提案。
すると祖母、
「ダメよ。コーヒーは大人味よ。まだ早いのよ大人味は」
瞬時に却下。
「……」
ますます腑に落ちない孫。
「……」
険しい顔の祖父。
「……」
私。
で、最終的に孫は、コーヒー味ではない、件のパピコを買った。というか買わされた。
それから私は、しばし
抑止力
について思いを馳せた。
「コーヒーは大人味」──その台詞は抑止力となり得るのか。
だって、パピコはパピコ。
コーヒー味でもパピコはパピコ。
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Nanase Nio
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