栞

春眠暁をおぼえず
Vignette


Category : Diary
Update : 2014/03/30[Sun]19:30



 春眠不覺曉
 處處聞啼鳥
 夜来風雨聲
 花落知多少



 決して寝坊の釈明として使われるような言葉ではないはずだ(夜明けの早まった春の到来を慶ぶ詩だと思う)が、こうもぽかぽか陽気だと目醒めもツラい。

 私はもともと寝道楽だ。放っておけば2日(48時間)は昏々と眠っていられる。

 小学生の時、夜中に父が急性胃炎だったかで悶絶し、慌てて救急車を呼び、けたたましいサイレンの音で近隣住民まで大童になったが、それにも気づかず私は呑気に朝まで爆睡していた。それは今でも変わらず、いびきも寝言もないとのことで「昏睡状態」と形容されたこともある。

 特に春はダメ。眠りが深くて困る。

 つまりなにが言いたいのかというと『聖闘士星矢Ω』の最終回を見逃した。

 朝6時25分に起きる予定(Ωは6時半)だったのに、意識が戻れば10時半。昨晩、寝たのは21時半ぐらいだったと思うけれど、アラームをセットしておいてこのザマ。

 ……まぁいい。

 済んだことはどうしようもない。Ωも、どのみち終盤戦はグダグダだったわけだし(牡牛座のハービンジャーが次期教皇に任命されるという大波乱は起きたらしいが)。



 昨日は浅草で仕事だった。

 仕事をあがり、時間に余裕があったので浅草寺に行った。六義園へと桜を見に行く気持ちもあったけれど、残念ながら目先の盛況に敗れてしまった。

 土曜ということもあって観光客も多く、エンジョイ意欲のぬきんでる大柄な外国人も交えて仲見世は輻輳ふくそうしていた。牛歩を余儀なくされ、8分咲きの桜花を堪能する余裕にも恵まれない。しかたなく、出店のお好み焼きに舌鼓を打ち、幾本かの路地を散策するにとどめて赤提燈をあとにした。

 その脚でJR総武線の浅草橋駅へ。春の嵐が吹くというニュースはあったが、びんを踊らせて視界不明瞭にするほどではなく、涼しく澄んだ爽快な風にほっこりしながら駅前にたどり着く。

 すぐに右折し、さらに秋葉原まで歩く。こちらはこちらで、まったくカラーの異なる日本文化に惹かれた多種多様な人々で溢れている。客引きのブレザや初音ミクのキャラバンを脇目に、ちょっとだけ一服してから辞退。御茶ノ水駅まで歩き、ようやく電車に乗って新宿と、そして帰路へ。

 結局、2〜3時間ぐらいは歩けたと思う(私は歩くのが速い)。ほどほどに疲労した身体で女子フィギュアスケートのフリープログラムをTV観戦。

 女子フィギュアは、予想どおりの順位。

 私見や持論はいくらでも述べられるが、十人十色でしかない芸術面の評価を、素人ごときがあたかも自分の審美眼こそ絶対の評価であるかのごとく偉ぶり「彼女のあの演技がどうのこうの」と言うつもりは毛頭ない。審査員について批評する気もない。だって「審査」と「評価」は意味が違う。

 ただ、予想していたとおりの結果なのが良かったし、面白くなかった(矛盾はしていない)。ユリア・リプニツカヤなどのメジャーどころにとどまらない、予想を裏切る新ヒロインの胎動をそろそろこの目にしたいから。

 強いて詳細な評価をくだすとすれば「八木沼さん、ちょっと黙っといて」ってことぐらいかしらん。というよりも、フジテレビが駄目なのよ。会場の音声だけが流れる副音声を期待して何度も何度も副音声ボタンを押したのに、ウンともスンとも言わなかった。だから、いちいち届けられる「緩急がいいですね」とか「ステップシークエンス」等の解説のたびにイライライライラ……。

 八木沼さんが悪いわけではなく(解説が必要な人もいる)このご時世にありながら視聴者に音声の選択肢を与えないフジが駄目だ(視聴者のツイートの非表示機能を設けない一部のニュース番組も嫌い)。会場の息づかいだけを耳にしながら観戦したかったのに、実況や解説があるごとに興が殺がれ、音声的にも面白くなかった。

 しかし──今シーズンのラストをさらったのは「風の3姉妹」だったか。

 天秤座の浅田真央。
 双子座のリプニツカヤ。
 水瓶座のコストナー。

 西洋占星術において、この3星座は「風の星座」と呼ばれる。

(牡羊座・獅子座・射手座 ⇒ 火
 牡牛座・乙女座・山羊座 ⇒ 地
 蟹 座・蠍 座・魚 座 ⇒ 水)

 だからどうしたという話だけれど、一般的には難しいことを鼻で笑い、一般的には些細なことに細かくこだわり、博愛主義の微笑みで煙に巻きながらも実は好き嫌いが激しく、だから1人の恋人をスペシャルに愛すが、相手から「俺だけを見てくれ」と如実に求められれば途端に逃げたくなる、まったく張りあいないことこの上ない、掴みどころのない3星座である。

 だからこの3星座同士というのは、仮に意識しあっているにしても、人には必ずや居心地のよい距離感があるのだと本能的に悟っているがゆえにあえて積極的に交わることをせず、場合によっては仲が悪そうに見られたりもする組みあわせ。

 拝めそうで拝めない組みあわせ──この風のワンセットを表彰台の上に拝めたことは、私にとって貴重だった。

 で、リプニツカヤの可愛さたるや。

 なにが可愛いって、表彰式のあとの巡回セレモニィで、段取りが今いちわからず、目を泳がせて挙動不審になったあげく、先行する真央ちゃんの背中を必死に追いかけようとする健気なお姿。そしてファンの投げた子熊の縫いぐるみを真央ちゃんが拾えば、倣ったように花束を拾いだすリプ子。

 妹。

 萌えたわ。炸裂したわ。

 経験値のあるリプ子であっても、観客のつくる独特の(好意的な)雰囲気には飲みこまれざるを得なかったのかも。

 だからこそ、なんとか良い姿勢で声援に応えようとする気づかいと、でもやっぱり対応が遅れ、真央ちゃんやコストナーという歴戦のお姉ちゃんをお手本にしようとする真摯なリプ子たるや。

 私、萌えに萌えまして候。

 ちなみに、

 

 スモールメダルセレモニィにて「好きなポーズをとってください」というファンのリクエストに、真央ちゃんやコストナーは決めポーズで応えたものの、どうやら照れくさかったらしくただ1人だけ周章狼狽、ほとんどフリーズ状態だったリプ子(15)。

 いずれにせよ、最後の最後に面白かった。

 興奮してよく眠れた。

 そんなもん早起きでけるワケあれへん。




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Nanase Nio
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