栞

私の嫌いなニポネーゼ
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Category : I Think
Update : 2014/06/13[Fri]09:00



 予想どおり、サッカーW杯を観る気持ちが整わなかった。

 サッカー、嫌いなスポーツではなかったはずなのに。やるのも好きだったし。高校時代の体育ではキーパーを買って出た。たぶんにシジマールの影響が大きかったのだろう。今でも稀にサッカーの試合にチャンネルが合えば、自然とキーパーに目が行く。

 が、最近はとみにモチベーション(もはやサッカー用語)があがらない。あれほど好きなスポーツだったのだからW杯ぐらい楽しみなさい!──陸上競技に対するパッションを思い出しながら準備してきたわけだが、どうやら間に合わなかった。

 私が観戦する気持ちにならない理由は、大きく分けて2つあるように思われる。

 1つは、ドラガン・ストイコビッチの引退だろう。引退記念のDVDまで買ってしまうほど、私は彼のことが好きだった。個人のテクも満載にガツガツと前を向く姿勢があり、とはいえ個人技に始終せずチームプレイにも徹することができる。剛と柔をあわせ持ち、闘将としても有名、カリスマとしても有名。超イケメンだし。

 南米スタイルやら欧米スタイルやらあるものの、ピクシーはそのどちらも持っているフットボーラだったような気がする。完璧。日本のスタイルとはなんぞや?──いまだに議論されているけれど、どちらも持っているピクシーを見てきた私からしてみればその議論ほど虚しい議論もない。四の五の言わんと「ピクシースタイル最強説」を唱えて取り組んだら!?──思わないでもない。

 そんな彼が引退し、たぶん、私の中のサッカーカルチャが終焉した。この後にあらわれるだろうどんな優秀なフットボーラも、たぶん、私は彼と比較して見てしまうのだろう。その作業のなんとつまらないことか。

 で、2つ目の理由は、やはり日本人の一致団結的な応援の風潮だろうな。

 昔はあんなにも応援してなかったのに、調子がいいなぁニポン人は──と思ったりする。ちなみに私の嫌いな技は「掌返し」であり、だから、そんなニポン人と結果的に同じ民族であるのがたまらなくイヤですあーイヤだイヤだ。

 サムライブルーってのもね。だって私、ブルーって嫌いな色なんだよね。どうしてブルーにしたんだろう。どうしてショッキングピンクじゃないんだろう。

「サムライ」てのもイヤ。なんで「武士」じゃないんだ。なんで自分よりも地位の高い人のかたわらに慎んで控える役職「侍」をオフィシャルネームにあげるかな。私、誰にもはべりたくないんですけど。

 あと、マスコミの、本田を撮影録画する際の妙にカッコよさげなエフェクトとか。セピアンなモノクロにしちゃったりしてね(しかも裸で)。んで、ストイックな姿勢ばかりクローズアップ。面白みも人間味も感じられない。弱さ、狡さ、幼さもあって人間味ってのは成立するのにさ。あれではただのサイボーグだよ。モンハンのCMで「本田グッジョブ!」って言ってる時の本田がいちばん人間らしかった。

 なんにせよ、ドラマにしたいんだろな。で、勝っても負けても感動できるようなインフラ整備が為されている。もしも日本が敗戦して帰国したら、間違いなく日本人は拍手して優しく出迎えてあげるという痛烈な恥を代表選手に与えることでしょう。罵倒して非難するという正しい行為には誰もはしらないのでしょう。

 敗北したのに誉められ、慰められるだなんて、当人にとってはいちばんの苦痛。で、現代日本人ときたらその愚行に及びかねない。

 まぁ、勝ちゃいいんだけどさ。

 私の価値観と日本人のマジョリティ的な価値観に恐ろしいズレがあって(世俗的な動向という意味で言えば私はマイノリティだと思う)どうにも気に入らないことが多く、それがサッカーW杯で顕著に見られる。だから私は、観戦する意欲が湧かない。

 そんなことよりも、私がガゼンに興味を抱いているのはブラジルの動向。ジンガのリズムでやれば施設建設も間に合ったんじゃない? ずいぶん悠長に取り組んできたものだよね。観客席崩落とか容易く予想できちゃうんですけど。しかも、W杯開催を反対する民も多いと聞くし、これでブラジル代表の結果次第によっては暴動さえも起きかねない。

 事故と事件、2つの危惧を抱えたW杯になりそうな。

 どの代表がと瞠目せずにテキトーに観戦するだろうけど、とりあえず無事の終劇を祈るばかり。




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Nanase Nio
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