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Category : I Think
Update : 2019/04/01Mon00:00



 耐熱ボードを施工するボード屋にはやたらと中国人が多い。なぜ多いのか、その理由は定かではないが、とりあえず事実であり、なんなら「建築現場あるある」と認定しても差し支えはないだろう。

 ただ、それ以外の業種では圧倒的にベトナム人が多い。むろん、これは今現在の話なのであり、今後、外国人就労者の数がどのように推移していくのかは定かではないが、とりあえず事実であり、なんなら「建設現場あるある」と認定しても差し支えは……わからん。

 で。先日、変な光景を目の当たりにした。

 作業中、同じフロアに土工どこう屋が居合わせたのだが、彼らの中にふたりの外国人就労者が混じっていた。ひとりは、名前の響きからして恐らくはベトナム人。もうひとりは、国籍はよくわからないものの、中東の人であることは間違いない。ちなみに、両者ともに20代前半の青年かと思われる。

 ふたりとも、あまり日本語が上手でない。来日してまだ年月が浅いのか、たどたどしい片言であり、だからか日本人の先輩や同僚の指示に戸惑う姿もしばしば見受けられた。とはいえ、絶望的なまでに話せないのかと言えばそうでもなく、いちおうコミュニケーションは取れているのであり、むしろよく勉強していると讃えるべきなのかも知れない。また、ふたりともに仲間から可愛がられている様子で、ちょくちょく朗らかな冗談をもらってもいた。その冗談が完全に通じているのかと言えばなんとも言えないが、少なくとも、ぞんざいなあつかいや人種差別的なあつかいはまったく受けていない。微笑ましさを感じる場面も多々あり。

 それで、ここからが変な光景なのだが。

 時おり、このふたりが会話する場面があった。例えば「あの工具を取ってほしい」とか「あの資材を持ってきてほしい」とか、あくまでも作業関連の会話なのだが、変なことに、お互い、日本語で話をしているのである。

 いっぽうはベトナム人、もういっぽうは中東人だ。生まれ育った国は明らかに異なる。宗教もアイデンティティも異なるだろう。むろん、母国語も異なっているはず。そんなふたりの共通言語が、英語ではなく、よもやの日本語であったというところに私は変な感覚をおぼえた。

 日本人が「英語は世界の共通語」というアホらしい幻想を見るようになって幾星霜いくせいそう。日本国内なのになぜか英語で会話しなくてはならない半グレ企業が次々と上場し、間近に迫る東京五輪の影響か、ほとんどすべての看板に英語のフリガナがあてられ、まだあてられていない日本語を見るや鬼の首を取ったかのように苦情クレームを寄せ、訪日外国人に英語で話せない日本人に対しては「まことお国の恥である」と眉間にしわまで寄せ、話せない者は己を恥じ、悩み、焦ってついには駅前留学所が儲かるというバブル景気時代をホーフツとするメランコリックな惨劇が日本中に広がりを見せる中、日本を訪れてひたいに汗するベトナム人と中東人の会話がよもやの日本語。

 変だわ。

 ホント日本人って変な民族だわ。





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Nanase Nio




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