不便な便利
Vignette
Category : I Think
Update : 2015/11/30[Mon]03:00
さぁて、愚痴をこぼしてみるとするか。
ここ何年かの間に、同僚から「いま何時?」と尋ねられることが著しく増えた。スマホの類いが出回ってから、著しく。
さすがは神か仏かと疑われるほど善人な私、しかたがないのでポッケから
携帯電話
ガラケー
を取り出して教えてあげる。落としたり紛失したりしないよう、百円均一で買った紐をストラップへとつなぎ、首にぶらさげる塩梅で本体を胸ポケットにおさめている。ので、取り出す手間は手間なりに、特に問題なく教えてあげられる。
ただ。
実は、彼らも携帯電話を携帯している。たいがいはスマホだが、ちゃんと携帯していて、紐などはついていないが、ちゃんとポケットに収納している。つまり、自らの手で自らのスマホを取り出し、自らの目で時間を確認することが充分に可能な状態であるということ。
なのに、私に尋ねる。
落として壊すことを恐れてか、自らの
手
スマホ
を汚さず、他者を介して時間を知ろうとする。なるほど、建設現場という場所は往々にして整地が為されていない。落下の衝撃を吸収するクッションに乏しいため、ディスプレイにヒビを入れたままで携帯している者もあんがいと多い。粉塵も舞うし、手も汚れているしで、ぴかぴかの新発売状態をキープしている者もほとんどいない。ファッショナブルな携帯電話事情とはならないのがガテン系の辛いところ。
私も同じ条件なのだがな!
あのさ、スマホ、持ってるんなら自分で確認できないかな?
なんで、わざわざ人の
手
ガラケー
を汚させるかな?
だって、スマホ、便利なんでしょ?
使ってナンボの便利
じゃない?
もしも持っていないのであれば、それはしかたのない話、こちらも汚れるのを覚悟するけどさぁ。
なぁんか腑に落ちない。
だって、実際、持ってるんだもん。
しかも、休憩時間ともなれば、フツーにスマホを手にしてフツーにゲームアプリに没頭してたりするんだよね。便利そうに。
合理的だとでも思ってるんだろうか。
ホント、スマホが普及してから、時間を尋ねられる機会が激増してるんだよねぇ。なんと言うか「便利な物は常に保護されるべし!」とでも言うぐらいに増えている。
それが現代を生きる
便利人
の知恵であり、スタンダードだとでも言うんだろうか。
でも、私は正直「そんなあなたがとても不便」と思っている。
それでもって、お友達やフォロワの反応にはいとも容易くアガったりサガったりするんでしょ? 情報を集めている状態が維持できないと途端に不安になったりもするんでしょ? 写真や動画を撮ったらすぐにアップするというスタンスへと移行しないと取り残されたような気になって落ち着かないんでしょ? スマホならそのすべてがスムースで、スピーディで、ストレスがなくて、便利で、だから気がつけば逆に依存してて、ソフトの便利さが追いつかないぐらいに没入しちゃってて、要は
ユーザ本人のキャパ的な不便さ
で胸をくすぶらせてるってなワケでしょ?
だって、便と不便は比例するんだ。
加えて、
第三者
わたし
からも「不便な人」と密かに揶揄される始末で……。
もしかして、スマホ、思ってるほど普及しきれていない?
普及しきれていないから、特別なツールを持っている
最先端
ポールポジション
の自分を維持したくて、だからスマホに対して過保護になってしまうんだろうか?
あんがいそうかも知れない。
早いとこ普及が完了して最先端じゃなくなること
を祈る。
でもさ、とりあえずさ、そういうのさ、まったく合理的じゃないからさ、やめたほうがいいと思うよ?
≪
表紙に戻る
≫
Nanase Nio
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -