ツワブキダイゴという男は、大の石好きであり、珍しい石のためならば労力を惜しまず、ホウエンだけでなく、シンオウやカントーといった他地方にまで足を運ぶ事すらあるのだ。その彼が、数ヶ月ぶりにカントーから帰って来た。恋人との久しぶりの再会に、ハルカは満面の笑みである。
二人は再会の挨拶もそこそこに、トクサネにあるダイゴの家でくつろいでいた。彼の石好きは相変わらずで、ニビの博物館は素晴らしかったとか、隕石が落ちた跡やお月見山は神秘的だったとか、土産話を語る彼はまるで子どものようだ。ハルカはそんな彼に呆れる事なく真剣に耳を傾ける。そして、いつしか話題はカントーで出会ったトレーナーの話へと移っていった。
「――それで、向こうで知り合ったトレーナーとポケモンを交換したんだ」
ダイゴが新しく手持ちに加わったポケモンをボールから出すと、ハルカは目を瞬かせた。
「わ!このポケモンって、もしかしてフォレトスですか?」
「正解。ハルカちゃんはフォレトスを見るのは初めてかい?」
「はい!やっぱり向こうにはこっちではなかなか見られないポケモンがたくさんいるんですねー」
ホウエンでは珍しいポケモンに興味津々のハルカは、目を輝かせながらフォレトスに触れ始めた。その瞳が例のトレーナーの姿を思い出させて、ダイゴは「そういえば」と話を続ける。
「…ハルカちゃんとよく似た目をしてたな、あの女の子」
「へえー。…え!お、女の子?」
「コトネちゃんっていう、僕とポケモンを交換してくれたトレーナーだよ。その子の目がハルカちゃんに似てたからさ、びっくりし…ってハルカちゃん聞いてる?」
「…女の、子?」
「…ハルカちゃん?」
「…だ、ダイゴさん!!何かあったりしないですよね!?」
「な、何かって?」
「だから!その子と浮気したり、とか…」
一瞬の沈黙。ダイゴは思わず笑いそうになってしまうのをこらえて、すっかりしょぼくれたハルカの頭を優しく撫でた。
「僕が浮気なんてするわけないじゃないか」
「…ぜ、絶対ですか!?」
「約束するよ。寧ろ、その子の目を見てハルカちゃんが恋しくなったくらいだ」
「ダイゴさん…」
「だから心配しないで」
「…はい!」
二人は強く抱き合った後、数ヶ月分の隙間を埋めるように、長くて深い、濃厚なキスを交わした。
心配性な彼女(だけどそういうところが可愛いんだ)
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