ありがとう!




「クッキー、焼けたよ、ルーク!
うん、良い匂い〜」
「う、上手く出来てっかな…」

オーブンから天板を取り出したアニスは、ミトンを外してルークを見た。

「気になるなら、味見すれば良いじゃん。
ラッピングは一人で出来るでしょ?」
「え?」

アニスはいてくれないのか、とルークが目を見開く。

「だって、ナタリアたち遅くなぁい?
ちょっと心配なんだよね」
「そう言えば…」
「ルークは形を作るのに、夢中だったもんねぇ?」

アニスが、少し意地悪げにルークを見る。

そして、粘土遊びとかしたことないんだろうな、とちょっと胸が締め付けられる感じに蓋をした。

「だ、だってよ…!」
「楽しかった?」
「すげー楽しかった!」

ルークがわたわたと言い訳を紡ごうとするのに、被せて問えば、満面の笑みが返ってきた。

「で、ね。話を戻すけど、ナタリアとティアを探してこようと思って」
「うん、そうだな」
「ラッピングは、そこに袋も用意してるし、縛る紐もちゃんと置いてるから。
クッキー、冷めてから入れるんだよ?」

良い?と念を押せば、ルークはこくり、と頷いた。

「余ったら、そこに置いといて。後で、食べちゃうから。
んじゃ、行ってきまーす!」

アニスは、あっと言う間に駆けていってしまい、ルークは戸惑いながら、ラッピング用のファンシーな袋を手に取った。



*****

無事にナタリアとティアも戻り、皆で夕食の席を囲んだ後、女性陣三人が解散を留めて、ルーク・ガイ・ジェイドそれぞれに、チョコケーキを振る舞った。

喜んで、ケーキにかぶり付く寸前、ルークはアニスからの意味深な視線と目が合ってしまい、動きを止めた。

アニスは何も言わないが、ルークは何かを忘れているのだ…!と悟り、一生懸命に考える。

「あ………!ちょっ、待った!
オレからも、ある、んだけど…」

チョコケーキの出来映えと、自身のチョコチップクッキーを比較してしまい、ルークは俯いた。

「へぇ、ルークも何かくれるのか?楽しみだな」
「さて、何が出てくるのやら、些か不安な気もしますが」
「大佐、そんな!」
「大佐、顔がにやけてますよぉ?」
「おや、私は常に柔和な笑みを絶やしていないつもりなのですが」
「白々しいにも程がありますわ…」

そんな、いつも通りのやり取りに、ルークはほっと息を吐く。

「ほら、ルーク!早く出しちゃいなよ!」

コソコソと、アニスが早口に囁く。

ルークは、ぎゅっと目を瞑り、意を決して座席の下に隠しておいたものを取り出した。

「あ、あの……!
オレの感謝の気持ち、だから…!」

そう慌ただしく告げて、皆の前にクッキーを詰めた袋を、一つずつ配る。

その袋を、一瞬見つめた後、全員が破顔する。

「ありがとな、ルーク」
「まぁ、貰ってあげましょうかね」
「ありがとうございますわ、ルーク」
「あの、私も貰って良いの…?」
「ありがとね、ルーク!」

アニスに強引に巻き込まれた形だったけれど、皆が笑ってくれた。

その笑顔が、何より嬉しいのだと、ルークも笑った。



「みんな、いつも、ありがとな!!」


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アトガキ
…スランプ気味…?
変な箇所があったら、ご指摘くださいm(__)m

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