▽あぁ、失敗
華は、「失敗した!」と思っていた。
「ん…っ、これ、おいし…」
テーブル越し、正面に座る双子の片割れが、ニコニコと言う。
「不味かねぇな…。華は飲まねぇの?」
「慧、学校では学院長って呼ばないとダメだろ」
「あ?別に良いだろ」
言い合う仲良し双子の手には、先日、面白半分で自校の食堂に導入した、ケフィア飲料がある。
学食共通の黒いプラスチックコップから、それを飲む二人は、真っ昼間から何やら妖しげな雰囲気を放っているのだ。
お陰で、学食にいる生徒の大半は、二人に注目していた。
「ん…っ、んぐっ、く…っん…」
澪は、コップを両手で支え、少し苦しそうな表情を浮かべて飲んでいる。
粘性がやや高いため、喉に絡んで、飲み辛いのだろう。
「ぐ…っ、ゲホッ!ケホケホッ、」
そして、案の定、噎せた。
余程苦しかったのか、涙目である。
しかも、口の端から垂れて、顎まで伝っている。
「あー、アニキ。ほら、」
慧が、澪の頬に手を当て、顔を上げさせると、垂れた白い液体を指先でなぞり上げて拭い、その指をそのまま、澪の唇に押し込んだ。
「ん…っ!?」
「垂れてたぞ。咳する時はちゃんと口押さえねぇとな」
すぐに指を引き抜く。
その時に鳴った、チュクッと言う水音に、一体何人の男子生徒が前屈みになったか。
数えるのも恐ろしい。
「んっ、んッ、ん…っ、ぷは…ぁッ。
ん…、美味い」
対照的に、片手でコップを持ち、ゴクゴクと飲み干した慧は、唇に付いた残滓を舌で舐め取る。
何処か妖艶なその仕草に、また撃ち落とされる男子たち。
「もっと、欲しい、な…」
澪が、コップの縁に残った滴をちらりと舐めながら、上目遣いで見遣り、呟く。
「まだおかわり、あるだろ…?」
慧は髪を掻き上げ、流し目を向ける。
――学食の、メニューチケットの自動販売機に。
自動販売機、場所変われ――!!
前屈みの男子たちの心は、一つになった。
「………。
お前ら、それで三回目だろ?いい加減にしないと、白いのだけで、腹一杯になるぞ」
「だって……濃くて、美味しいんだもん…」
澪が不満そうに言う。
「いーだろ…、ケチケチしなくても。もっと…、欲しいんだよ…」
慧が、唇の端を引き上げて笑う。
「………。飯食わねぇと、昼休み終わるぞ?
折角の唐揚げ定食が勿体ないだろーが」
「あっ!」
二人は、その一言で、大事な食事を思い出したらしい。
華は、安堵のため息を漏らした。
翌日、学食のメニューから、ケフィア飲料は姿を消したのだった。
*アトガキ*
ケフィアの話です
◯ェラの話は…書き辛いので、えろい仕草のオンパレードです。
こんな感じで、良いですか?
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