「ルーク、好きな人はいますか?」 ある日唐突に、ルークはジェイドにそう訊ねられた。 ドアに背を向けてベッドに座り、靴を脱いでいたルークは、その手を止めて、ジェイドを振り向いた。 ジェイドは、ただ薄い(そして胡散臭い)笑みを浮かべて、ルークを見ていた。 「そりゃどーゆー意味だよ?」 「貴方が、私の問いの趣旨を理解する必要はありません。 ただ、いるかいないかだけを答えなさい」 笑みを浮かべているのに、声だけは淡々としていて、少し怯えたルークは、やや目を逸らしながら答えた。 「い、いねー…よ…?」 「却下です」 「はぁ!?」 即答されて、ルークは素頓狂な声を上げた。 答えを求めたくせに、答えたら却下とは何事だ。 「貴方には、好きな人がいなければなりません。 ですから、却下です」 「じゃ、いるかどうか訊くなよ…」 たったこれだけのやり取りで、ルークはげっそりと疲れた。 ジェイドは相変わらず、胡散臭い笑みを、うっすらと浮かべています。 「ルークの好きな人は、誰ですか?」 「あー?」 若干、やさぐれた声で答えてしまっても、ルークに責任はない。 それでも、真面目に考える辺り、ルークは律儀だと言えるだろう。 不器用とか、バカ正直とも言うが。 「あー…ガイ…とか?」 「却下します」 「あぁ!?」 ジェイドの淡々とした声に、ルークはジェイドを睨もうとして………目を逸らした。 だって、怖い。 うっすら笑ってんのに、オーラが怖い。 つーか、目が笑ってない! カタカタと震えるルークを気にも留めず、ジェイドは静かに繰り返した。 「ガイは却下です、ルーク。 ……他は?」 「ほ、他?好きな人?」 ルークが、ビクビクとジェイドを見上げる。 「そうです」 「あ…えーと…。て、ティアとか…?」 ガイがダメな理由は、男だからだろうかと、おずおずと言ってみる。 「却下です」 「え゙」 割りと頑張ったのに、あっさりと退けられて、ルークは肩を落とした。 「誰ですか?」 「まだ続けんのかよ…。 あー…アッシュとか」 男女差ではなく、被験者を認めろということか、と挙げる。 「却下です」 駄目らしい。 もう、どういう基準か分からないので、可能性のありそうな人物から、片っ端から挙げてみる。 「えーと、父上と母上」 「却下です」 「ヴァン師匠」 「却下です」 「ナタリア」 「却下です」 「イオン」 「却下です」 「アニス」 「却下です」 もう、訳が分からない。 ルークは肩を落とし、ついでに視線も落とした。 自分が知っていて、関わりのある人は、全員上げたのではないだろうか。 ――そういえば。 ルークは、ちらりと視線を上げる。 この、目の前の、意味が分からない男を挙げていなかった。 「じゃあ…、ジェイド」 ジェイドは、ルークの翠の瞳と視線を絡めて、ゆっくりと微笑った。 「はい、ありがとうございます」 じゃあ、君が好き (「私も貴方が好きですよ」) 後書き お久し振りです。 図書館で、こんなタイトルの本を見つけてしまい、「これは書かねば!」と義務感に駆られました。← ルークに好きだと言ってもらいたいジェイドと、最初から言えよなルークでした。 12,01,08 完結 back |