No title 「ルーク、好きです、愛してます」 夜の帳の中で、彼は囁く。 月に愛されているかの様な、月影に金に輝く髪も、月兎の如き紅眼も、闇の中でこそ映える。 腕に抱き締められているのは、太陽の申し子の様な、焔色の髪に、新緑の眼の少年。 その瞳は、雨に濡れた若葉のように潤んでいる。 否、熱に――狂喜に(狂気に)、浮かされている。 「うん……、ジェイド、オレも好きだよ……」 ねぇ、だからさ、 「コロシテヨ」 ――殺してよ。 少年は、男の両手を己の首に絡めさせた。 その細さに、男はうっとりと目を細めた。 「勿論です、ルーク。 ただ、貴方が事切れる直前に、私の頸も切って下さいね?」 男はそう言って、少年の手にナイフを持たせ、己の頸動脈に引き寄せた。 「こうやって、私の頸の後ろで手を組んでいれば、事切れて力が抜けたら、私の頸動脈も切れる、という訳です」 「ん、いいな、それ」 少年はクスクスと笑い、少し首を伸ばして、男にキスを贈った。 「生き残っても、直ぐに追い掛けるから」 少年は、護身用の短刀を傍らに置いた。 その刃には、即効性かつ致死の毒が塗られている。 「ジェイドも、追い掛けてくれるだろ」 「もちろん、ですよ」 世界になんて背を向けて、 さぁ踊ろう、二人だけの、 後書き。 たまに、病んでる話を書きたくなります。 時間軸は、レムの塔一回目と二回目の間か、逆行して再会直後とかだと思います。 ちょっと、別ver.も考えてるので、今度書きます。 11,10,09 完結 back |