雨の日に



しとしと。霧雨。
遠くを見渡せない、水滴の白いカーテン。

バルコニーに、独り佇むジェイドは、何を考えているのだろう。

――未来のこと?
これからの戦いのこと?
戦いの後のこと?

――それとも、過去?
フォミクリーのこと?
ネビリム先生のこと?




(――ねぇ、ジェイド)




案外、何も考えてなかったりして。

ただ、雨を鬱陶しく思って、
明日は晴れると良い、とかそんな風に思ってたり。

しないよなぁ…。




(過去を否定しないで、
未来を悲観しないで)




(現在(イマ)を見て。
オレを見て。)




――ねぇ、ジェイド。



「――そんなに見詰められると、穴が開いてしまいそうです」

笑い混じりの声が呟いて、ジェイドがゆっくりと振り返った。

「黙って見ているくらいなら、おいでなさい」

オレは短い距離を駆けて、ジェイドに抱き付いた。

「何で、こっち向いてくれなかったんだ」
「背中に熱い視線を感じたので、貴方は私の背中がお気に入りなのかと思ったんですよ」
「じゃ、何で急に振り向いたんだ」
「私が我慢できなかったんですよ」

私だって、ルークを見たいです。

ジェイドは真顔で言い切った。

オレは、ちょっとホッとして、それから笑った。
ジェイドも、悪戯っぽく笑った。

どうしようもなく、幸せだった。





雨は、未来も過去も覆い隠して、
現在だけを切り取っていた。


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アトガキ
3000hit記念小説です、が…く、暗い…orz
読みようによっては、明るい、と、思うんですが
どうでしょうかね?
あ、一応、フリーです。


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