七夕昔語り



――今となっては昔のお話です。

大きな河の両岸に、それは美しい男と、それに勝るとも劣らない可愛らしい少年がおりました。

男は、ブウサギと呼ばれる家畜の世話をしているブウサギ飼い、
少年は、旗を折って――いえ、機で綺麗な絹を織る、機織りでした。

ある日、川越しに二人は出会い、すぐに恋に落ちました。

それから二人は、手旗信号でやり取りをして、少年が機織り機を壊して筏を作り、男に会いに行くことになりました。

ですが、少年は如何せん不器用だったため、筏を作れません。見るに見兼ねた少年の使用人が、筏を作り上げてくれました。

喜んだ少年は、早速、河へと漕ぎ出しましたが、何せ不器用だったので、すぐに元の岸に戻ってしまいます。これまた見るに耐えなかった使用人が、少年を乗せて筏を漕いでくれたので、何とか無事に対岸に辿り着きました。

「ジェイドー!」
「ルーク!」

ようやく、直接顔を合わせて、出会えた二人は、ひしと抱き合います。

「遅すぎます…私がどれだけ、貴方に会いたかったか分かりますか?」
「分かるよ。俺だって、ジェイドに会いたかったんだから…」
「ルーク…」
「ジェイド…」

※情熱的に見詰め合う二人は忘れていましたが、この場には少年の使用人もいます。


それから、二人は働きもしないで、毎日イチャイチャとしかしなくなりました。

何故なら、少年の機織り機は、筏へと姿を変えていましたし、
男のブウサギは、少年の使用人が世話をしていたからです。

しかし、男を羨んだ男の幼馴染みでもある天帝と、ややブラコンの気がある少年の兄が、怒りました。

そして、二人は引き離されてしまったのです。

天帝は、二人にこう言いました。


「仕事をしないのなら、この先二度と、想い人には会わせない。しかし、真面目に働くのならば、年に一度だけ逢瀬を許そう」





そう言われた男は、告げた幼馴染みを鼻で笑いました。

「はっ。私がそんな悪条件を飲むと思ってるんですか?」
「いや、そこは素直に飲んどけよ!!」
「イヤですよ」

男は、幼馴染みでもある天帝の要求など、コンマ一秒で切り捨てます。

「会わせて頂けないんでしたら、自力で会いに行きますから、構いませんよ」
「お前がそーゆー態度なら、こっちにだって考えがあるぞ!?」

スタスタと歩き出した男に、天帝は声を荒げます。

すると男は、鋭く細めた瞳を、冷たく輝かせました。

「ルークに寸毫でも傷を付けてご覧なさい。その時は、私は貴方の敵になりますから」

容赦はしません、と言って、男は河岸へと向かい、姿を消しました。

天帝は、仕方ねぇなと肩を竦めて、少年の兄に何と言おうかと頭を捻ったのでした。




一方、引き離された少年と、その兄は、激しく言い争っています。

「何すんだよ、アッシュ!!」
「うるせぇ!テメェが仕事しねぇからだろうが!!」

恋人と離れさせられた少年は、不機嫌にそっぽを向きました。

「仕方ねぇじゃん!機織り機は筏にしちまったんだもん!!」
「そもそも、それが可笑しいだろうが!!テメェ、何を考えてやがる!!」

少年はもじもじと頬を染めました。

「何って、ジェイドのこと……」
「黙りやがれ!!」
「んだよ、アッシュが訊いたんじゃねぇか!!」

無意識に惚気られて、少年の兄は怒鳴り散らします。

「大体、機織り機もねぇのに、どうやって働くんだよ!?」
「安心しろ、新しい機織り機があるからな」

少年の兄が、ニヤリと笑う顔に、少年は悲しげに俯きました。

「オレはジェイドと暮らせて、幸せだったのに……。
アッシュは、オレが幸せになるのが許せねぇんだな……」
「なっ、何言ってる!?
俺はただ、あの男が胡散臭せぇから…!」

少年の兄は、大慌てで否定しますが、少年はますます俯きました。

「ジェイドは、胡散臭くねぇし、優しいし、カッコいいし、強ぇし、頭良いし、……とにかく、オレの大好きな人なのに…」

少年の兄は、眉間にシワを寄せたまま、オロオロと周囲を見回しました。

その時、河の方から何やら声と、冷たい空気が流れて来ました。


「受けよ、無慈悲なる白銀の抱擁!アブソリュート!」


「ジェイド!!」

少年の顔が輝きます。

「まさか、んな訳が…」
「あるんですよねぇ♪」

非常に楽しそうな声と共に姿を現したのは、ブウサギ飼いの男でした。

「ジェイド、ジェイド、ジェイドー!!」
「ルーク…貴方に会えない日の、何と味気無かったことか……」
「オレも…ジェイドに会えなくて、すげー…寂しかった……」

二人は強く互いを抱き締め合いました。

「でも、ジェイド…どうやってココに来たんだ?」
「あぁ…。河を凍らせてきたんですよ」
「はぁ!?」

少年が振り返ればそこには、滔々と流れていた筈の河が一面凍り付き、両岸を隔てる役割を果たしていません。

「どうりで、何か寒いわけだ…」
「寒いのでしたら、私が暖めて差し上げますよ、ルーク」

二人のイチャイチャぶりを眺めるしかなかった少年の兄は、はっと我に返り、男に詰め寄りました。

「くそっ、おい、テメェ!!
天帝はどうした!」
「置いてきました☆」
「えっ、それ…良いのか?」
「良いですよ。私はルークがいれば、それで良いんですから…」
「ジェイド…」

再びイチャイチャしだした二人に、少年の兄の声は届かず。



最終的に、一月後には諦めて、二人の仲を渋々認める少年の兄の姿がありました。


その後、男と少年は、末永く幸せに、ラブラブと暮らしましたとさ。



めでたし、めでたし♪
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アトガキ
七夕ですから、何かを書こうかな、と思ってたら、こうなった。
何故こうなった(汗)

公害級バカップル、ジェイルク。偽者度も、公害級orz

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